例会

第33回例会(研究発表会)

日時:1997年9月13日(土) 13:30~17:30
場所: 関西ドイツ文化センター(京都)
<<内容>>

1.研究発表
発表者:高田 博行 氏(大阪外国語大学)
題目:言語の「本来形」という思想と言語の現実
――17世紀後半における格変化を例にして――

[要旨]

 屈折素(Flexiv)は音節をなし明確に屈折変化を表示するべきである(つまり dem Baum ではなく dem Baume、des Tags ではなく des Tages、unsern Kindern ではなく unseren
Kindern)という17世紀後半の文法家たちの思想は、同じ時期に言語の現実において格変化語尾の e音が組織的に復旧されたプロセスと符合し、その点では言語の理論と言語の現実とが一致対応した。しかし他方では、強い変化ほど古典語に近くそれゆえ正しいという思想のために、文法家たちは der guter Mann, die gute Leute, gutes Weins, derer Maenner, die Buergereといった多重格変化(Polyflexion)のほうをどうしても優先させがちで、この点では単一屈折(Monoflexion)への傾向を明確にしていた当時の支配的な言語事実に反した。


2.シンポジウム「日本のドイツ語教育は滅びるか?」

報告者:西本 美彦 氏(京都大学)
題目:京都大学でのドイツ語教育の現状とその改善の取り組みについて

報告者:中村 直子 氏(大阪府立大学)
題目:工学部単位減に対する大阪府立大学の対応と現時点での成果

報告者:橋本 兼一 氏(同志社大学)
題目:同志社大学におけるドイツ語教育――現状・成果・課題――

[報告要旨]

 京都ドイツ語学研究会の1986年の第一回例会でドイツ語教育の危機についてのシンポジウム(自由討論「いま大学でドイツ語は必要か?」)が行われて、すでに十年余になる。その後1995年7月に「大綱化」を主眼とした大学設置基準の大幅な改訂が行われ、各大学では教養教育のカリキュラム編成やその実施体制に関わる改革が急速に進められた。その影響をもろに被った科目の一つはいわゆる「第二外国語」である。なかでも従来からほとんどの大学で履修されてきたドイツ語の衰退ぶりはまさに劇的であると言ってもよい。
本シンポジウムでは高等教育における第二外国語の一環としてのドイツ語に焦点を合わせながら、国立大学、公立大学、私立大学での外国語教育の現状とその改善のための取り組みについて報告を行う。それをもとに、国際化の進む現代社会において外国語教育はどのように位置づけられなければならないか、そして外国語教育の理念を、実践的かつ効果的に遂行するためには、なにが求められるかについての具体的提案を含んだディスカッションを行いたい。

第32回例会(研究発表会)

日時:1997年5月24日(土) 13:30~17:30

場所: 関西ドイツ文化センター(京都)

<<内容>>

1.研究発表
発表者:竹尾 治一郎 氏(関西大学)
題目:哲学における意味論の位置

[要旨]

 デカルト以来の近代哲学では、認識論から始めるのが常であった。フレーゲは認識論を彼が「論理学」とよぶものによって置き換え、哲学の諸部門の間のハイエラーキーを変えることによって、哲学の全体的展望を変えてしまった。ただし彼が「論理学」とよんだものは、伝統的意味での論理学(演繹的推論の研究)とは違い、今日では「意味の理論」ないしは「言語の哲学」とよばれるものに近い。この発表では、(1)フレーゲの意味論についての一通りの説明の後、彼自身の意味論がどのような問題を残したかを述べ、(2)真理、意味、話者の意味などの概念についての、ダミット、クワイン、デイヴィドソン、グライスなど、比較的最近の哲学者たちによるフレーゲへの挑戦に手短に言及し、(3)フレーゲが与えたパースペクティヴのなかで、現代の哲学者たちの仕事――少なくとも、その言語哲学の部分――が行われている事情を明らかにしたい。


2.報告
報告者:合田憲氏(姫路獨協大学)
題目:高等学校におけるドイツ語教育の現状

[要旨]

 日本のドイツ語教育は現在、大学(高専)から始められるのが一般的である。大学設置基準の大綱化以来、大学において語学、特に第2外国語の退潮が叫ばれている昨今であるが、全国では約120校の高等学校でドイツ語科目が設置されている。高等学校の現場は大学以上に深刻な状況にある。高等学校のドイツ語教育の現状と問題点を、およそ次のような項目に従って紹介してみたい。

    • 1. 履修形態
    • 2. 問題点(第2外国語として)

英語との関連カリキュラム上の問題大学入試と大学の受け入れ体制教員の養成と配置(雇用)その他(第1外国語)

  • 3. 教員としての取り組み
  • 4.今後の展望
  • 5.その他