■第117回例会について
第117回例会についてお知らせいたします。今回は『地域言語と表記法』と題しましたシンポジウムとなります。
- ・日時:2025年12月20日土曜日 13:30より(予定)
- ・開催形式:オンライン形式
オンライン形式での開催であるため、懇親会はございません。当日のZoomアクセスURLは11月22日配信されたメールの案内をご確認ください。見当たらない、または受信されてない方はinfo[@]sprachwissenschaft-kyoto.com([]は取ってください。)までお手数ですがご連絡の方よろしくお願いいたします。
非会員の方は事前登録が必要です。以下のURLからご登録ください。https://forms.gle/jATxJnKkLzQCdujf8
いただいた情報をもとにZoomミーティングへの入室を許可します。また当日はご登録の際と同一のご氏名でご参加ください。
シンポジウム『地域言語と表記法』
全体要旨
表記法とは、ある言語における標準化された文字体系であるが、その成立過程や使
用状況、さらに表記法が果たす役割などは各言語で異なる。さらに、公用語として
制度的に標準化がなされた言語では、表記をめぐる選択やその位置付けは比較的固
定されているのに対し、地域言語では表記法がしばしば流動的であり、また話者の
言語意識やアイデンティティなどを反映することも多い。そのため、地域言語にお
ける表記法は、社会的・文化的側面を含む多様な要素の観察対象となりうる。
本シンポジウムでは主に西ゲルマン系の言語を中心に次の 6 つの地域言語を対象と
する:スイスドイツ語(スイス)、低地ドイツ語(ドイツ)、トランシルヴァニ
ア・ザクセン語(ルーマニア)、アルザス語(フランス)、リーヴ語(ラトビア:
ウラル語族)、ヴィラモヴィアン語(ポーランド)。各報告では、対象言語におけ
る表記の特徴、表記法の成り立ち、および使用状況、そして、表記法の機能や話者
の言語意識といった多角的な視点から考察が行われる。
これらの報告を通じて、話者数の規模や表記法の存在および定着度、使用領域など
が異なる地域言語に対して、表記法という共通の視点から地域言語の多様な姿を明
らかにすることを目的とする。
報告1
報告者:大喜祐太
題目:スイスドイツ語の表記法-Swiss SMS Corpus の事例から-
要旨
ドイツ語圏スイスでは,標準語に対する方言優位の状況があるものの (熊坂
2004)、「話すように書く」という「ディート表記法」(1938) のモットーに現
れているように、実際的なコミュニケーションでは各地域の話者は方言ごと
の書記を採用するため、標準ドイツ語の正書法のような統一的表記法はドイ
ツ語圏スイスの方言には存在しない。本発表では、SMS コーパスの事例を参
照しながら、2000 年代以降のドイツ語圏スイスにおける方言の表記法の現状
について考察する。
報告2
報告者:覚知 頌春
題目:低地ドイツ語の正書法 SASS-その成立と特徴について-
要旨
本発表では、低地ドイツ語北低地ザクセン方言の正書法として、現在広く流
通している SASS の成立の背景と書記法としてのその特徴を扱う。SASS と呼
ばれるこの書記法は、1956 年に Johannes Saß によって「低地ドイツ語正書法
の規則」として制定され、それを基に辞書・文法書・文学作品が多く出版さ
れてきた。低地ドイツ語の書記法は SASS の成立以前から、長音の h
(Dehnungs-h) の扱いなど、標準ドイツ語の正書法に寄せるか距離を置くかが
一つの論点となってきた。本発表では、こうした議論が SASS にどのように
反映されているかを、その特徴を紹介しながら論じる。
報告3
報告者:アーント沙羅
題目:書きことばとしてのトランシルヴァニア・ザクセン語
要旨
現ルーマニアのトランシルヴァニア地方で 11 世紀より発展してきたドイツ語
少数言語の一つであるトランシルヴァニア・ザクセン語では、19 世紀以降、
当該言語を用いた文芸活動が盛んに行われるようになったが、現在に至るま
で統一的な表記法や正書法は存在せず、話者が様々な方法で各々の変種を表
現している。この背景には、話者であるトランシルヴァニア・ザクセン人が
歴史を通していわゆるドイツ語圏のドイツ語(Binnendeutsch)との関わりが
日常的に深かったことや、話者たちの言語保存に対する意識といった様々な
要因が考えられる。本発表では、これらの要因を示し本シンポジウムで扱わ
れる他の地域言語と異なる点を考察し、最後にはトランシルヴァニア・ザク
セン語の書記法をめぐる近年の議論に触れながら、書記法のない言語の書記
法を定めるということについて検討する。
報告4
報告者:作本 大祐
題目:綴字からみる言語事情と言語観―アルザス語を事例として―
要旨
フランス北東部アルザス地域で話されるアルザス語は、現時点で「正書法」
を持たない一方、これまで多様な綴字がみられ、またさまざまな綴字法(書
記体系)が提唱されてきた。本発表では、こんにちのアルザス語テクストな
どにおいてよく観察される綴字の特徴からアルザスの言語事情を概観したう
えで、近年提唱された綴字法のなかで最も影響力があると考えられる
ORTHAL(Orthographe alsacienne)の基本理念や、今年刊行された(南部)ア
ルザス語参照文法(Zeidler et al. 2025)をめぐる報道などに垣間見えるアルザ
ス語コミュニティの言語観について考察をおこなう。
報告5
報告者:難波華子
題目:ラトビアの少数言語リーヴ語の表記と象徴性
要旨
本発表では、ラトビアにおけるリーヴ語の立ち位置について、実例をもとに
考察を行う。国をあげてリーヴ語の継承に力を入れており、学校教育で取り
扱ったり、ポスターや道路標識に使用したりするなど、多岐にわたる取り組
みが行われている。そこで表記されるリーヴ語のあり方と、その象徴性につ
いて論じる。
報告6
報告者:下村恭太
題目:ヴィラモヴィアン語における表記法とその機能
要旨
本発表では、ヴィラモヴィアン語における表記法の使用実態を通じて、表記
法が単に文字体系として存在するだけでなく、母語話者とニュースピーカー
をつなぐ媒介、アイデンティティの可視化や言語の存続の基盤となる役割を
担うことを明らかにする。その際、出版物や公共空間などでの使用を取り上
げ、消滅危機に直面する言語における表記法の役割について社会言語学的観
点から考察する。
以上
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論文以外原稿締切日 2026 年 1 月 23 日(必着)
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最終更新日: 2025年11月23日