例会

第73回例会

日時:2010年12月18日(土) 13:30 ~ 17:30

場所:京都大学 楽友会館「大会議室」

<<内容>>

研究発表会

1.研究発表
発表者:湯淺 英男 氏 (神戸大学)
題目:接続法第2式非現実話法の非現実性について―モダリティと文法との関わり―

[発表要旨]

 藤縄康弘(2009)は日本独文学会賞を受賞した、実現した事態を表わす接続法第2式の文Das hätte ich geschafft!を扱った論文に関わって興味深いことを述べている。左記の接続法の例や既成事実を表わす「残念」「嬉しい」表現のzu不定詞なども含め、「未然から既然」への転化においては、「文法(体系)とコミュニケーション(行動)の接点として、むしろ情こそ注目に値する」と。また日本語文法において尾上圭介(2001)は発見・感動の「水!」と存在しないものの要求としての「水!」を、「存在承認」と「存在希求」とに分類しているが、このことは「水」の出現する現在時・未来時という時間をモダリティが左右しているとも言える。本発表では、こうした発話に関わるモダリティが文法形式本来の意味に及ぼす影響を遠くに見通しつつ、さしあたり接続法第2式の非現実話法において実際に非現実な事態が表現されているのかどうかを具体的な事例に即して考察してみたい。



2.シンポジウム:代名詞・虚辞・填辞 ― es をめぐるシンポジウム

[シンポジウム要旨]

ドイツ語の esという形式にはこれまで様々な機能が指摘され、また分類がなされている。このシンポジウムではとりわけ esの代表的な機能である代名詞・虚辞・填辞としての用法に注目し、各発表者が得意とする角度から、これらの用法への接近を試みる。es にはまず代名詞としての用法があるが、同じような環境で現れる代名詞には、dasがある。それぞれの代名詞にはどのような機能上の相違が見られるであろうか。吉村は両者の機能上の違いに焦点を当て、一つの試みとして2格研究の立場から、中高ドイツ語の作品に見られる es/ez
の機能について取り上げる。また es は一般に虚辞と見なされ、「非人称構文」の主語として囲い込まれてきたが、ドイツ語は虚辞 es の出現に関して格段に精緻な言語である。この虚辞 esは言語類型の観点から見ると、どのように位置づけられるであろうか。小川はドイツ語を出発点として他のヨーロッパ諸語や日本語などの対応物を比較検討し、ドイツ語の個別的特徴と並んでその背後にある普遍的特徴を探る。es にはさらに統語的な空所を埋める填辞としての用法も見られる。この esはしばしば純粋に統語的な意味での機能が指摘されてきたが、実際にこの形式を使用する際とそうでない場合との、意味上の差異は存在しないであろうか。宮下はコーパスならびにインフォーマント調査に依拠することでこの問題を扱う。
以上の報告により、es の包括的理解を目指すきっかけを作り出すことが、本シンポジウムの目的である。


報告1
報告者:吉村 淳一 氏(滋賀県立大学)
題目:『ニーベルンゲンの歌』における2格のesの機能について

[要旨]

 本報告では人称代名詞と指示代名詞の機能上の違いに焦点を当て、2格研究の立場から、esの機能についてアプローチしたい。中高ドイツ語において、300以上の2格動詞が確認されている。しかし、現在では2格動詞は8個ほどにまで減少し、2格の動詞修飾的な機能は失われつつある。2格衰退の原因の一つに13世紀中頃に2格のesと4格のezに見られる音声上・形態上の区別が取り払われたことが挙げられる。しかし、実際には、例えば『ニーベルンゲンの歌』において、代名詞の2格は人称代名詞esで出現するよりも指示代名詞desで出現する方が圧倒的に多く、さらには人称代名詞の2格の別形sinが出現することさえもある。desは明確に2格であることを示すのに対して、esは形態上の区別を曖昧にするため、作品全体において出現する割合が低い。また、esは動詞や代名詞との融合形(例:sagts, dichsなど)で現れたり、完本としてみなされる3つの写本(A,B,C)において、ezで表記されたり、sinで表記されたり、写本によって表記上のゆれが多く見られる。そのような問題点を紹介しつつ、es とdesの機能上の違いがあるかどうかを検証することを試みる。


報告2
報告者:小川 暁夫 氏(関西学院大学)
題目:いわゆる虚辞esの機能と類型について

[要旨]

 いわゆる虚辞esについてはその様々な用法が指摘され、また分類がなされる一方で、Platzhalterやdummyといった統語的呼称で一律に「非人称構文」の主語として囲い込まれてきた経緯がある。本報告では「非人称構文」を通常の「人称構文」から硬直的に独立したものではなく、その相対性・連続性の中で特徴づけることを試みる。虚辞(expleo)が原義どおり「文を完全にする」ことを目的とするならば、そこには形式や統語のみならず意味や機能が問題となると予想されるからである。虚辞esの出現に関して格段に精緻なドイツ語を出発点として他のヨーロッパ諸語や日本語などの対応物を比較検討することで、言語類型における個別的特徴と並んでその背後にある普遍的特徴を解明する手掛かりとしたい。天候・気候述語、感覚・心理表現などの具体的事例に基づいて議論を組み立て、非人称構文についての再考、ひいては理解の転回を促したい。


報告3
報告者:宮下 博幸 氏(金沢大学)
題目:いわゆるテーマの es の出現とその機能について

[要旨]

 本報告では es の多様な用法のうち、テーマのes もしくは前域のes と呼ばれる用法を詳しく考察する。この es
は天候などを表す非人称構文に現れる es とは異なり、前域に他の文肢が現れると不要となる。本報告ではこの es がどのような環境で出現するのか、この es
を使用した場合とそうでない場合にどのような相違が生じるのか、またその機能はどのようなものかを明らかにしたい。報告ではまずこの es に関して文献でこれまで指摘されてきたことをまとめる。引き続きこの
es を含むコーパスのデータを用いて、この es の実際の言語使用におけるいくつかのタイプを指摘したい。そしてこのデータが先行研究との関わりでどのように評価可能かを考察する。
さらにインフォーマント調査に基づき、この es の使用条件について、さらに精緻な分析を行いたい。これらの分析から、この es の機能の解明を目指す。最終的にこのes
と他の非人称構文の機能との共通点(ならびに相違点)にも触れる予定である。

 


ディスカッション

第72回例会 (共催: 関西ベルギー研究会)

日時:2010年9月25日(土) 13:30~17:00
場所:キャンパスプラザ京都6階 京都産業大学サテライト第3講習室
<<内容>>

研究発表会

研究発表1
発表者:石部 尚登 氏 (東京外大COE研究員)
題目:ベルギーのゲルマン語圏とその『方言』観

[発表要旨]

 ベルギーにはオランダ語圏とドイツ語圏の2つのゲルマン語圏が存在する。両者は歴史も人口規模も大きく異なっているが、「方言」の捉え方には共通点が見られる。本発表では、そうしたベルギーのゲルマン語圏に特有の「方言」観について、言語政策の観点から、とりわけオランダ語圏を中心として報告する。域内の「方言」は、フランス語圏ではフランス語とは異なる言語として承認しているが、オランダ語圏ではあくまでオランダ語の内的変種と認識されている。このような「方言」観が、「言語戦争」の中で対フランス語のために創り上げられた政治的なものであることを示し、現在ヨーロッパで主流となっている地域語復権の動きに及ぼしている影響を明らかにする。


研究発表2
発表者:黒沢 宏和 氏(琉球大学)
題目:古高ドイツ語『タツィアーン』における翻訳手法―dixerit:
直説法未来完了形か接続法完了形か―

[発表要旨]

『タツィアーン』は、830年頃フルダの修道院でラテン語から古高ドイツ語へと翻訳された。この『タツィアーン』のラテン語テクストには、時折、語尾が-eritで終わる動詞、例えばdixerit(不定詞 dīcere;「言う」)が現れる。この語形は、1)直説法未来完了形、2)接続法完了形の二つの解釈が可能である。一方、古高ドイツ語には、直説法であれ、接続法であれ、現在形と過去形しかない。古高ドイツ語『タツィアーン』において、この語形はどう翻訳されたのであろうか。本発表では、発表者が『タツィアーン』の中から収集した、直説法未来完了形か接続法完了形か、語形の上では判別できないラテン語の43例を基にして、これらの箇所が如何に古高ドイツ語へと翻訳されているかを検証したい。


研究発表3
発表者:檜枝 陽一郎 氏(立命館大学)
題目:韻文から散文へ─『ライナールト物語』韻文版および散文版の比較─

[発表要旨]

 1400年頃に成立した動物叙事詩『ライナールト物語』は、中世フランドル文学を代表する作品である。はじめ韻文で著されていたが、その後一般大衆向けの散文版『ライナールト物語』が1479年に成立した。本発表の目的は、この二つの物語を比較分析して、韻文から散文へとテクストが変わる際の脚韻の取り扱いを明らかにすることにある。韻文では語順を無理に変えたり、必要ではない語を加えたりして、文章を装飾する傾向がある。逆に散文では、添加された語を削除したり、語順を変えて文を作り直したりすることが必要となる。当時の散文作者がどんな基準で文を作り直したのかを知ることは、15世紀という韻文から散文への移行期を研究するうえで非常に重要だと思われる。


2.臨時総会

第71回例会

日時:2010年5月22日(土) 13:30~17:00
場所:京都ドイツ文化センター
<<内容>>

研究発表会

司会者:桐川 修 氏(奈良高専)

研究発表1
発表者:工藤 康弘 氏 (関西大学)
題目:16世紀ドイツ語における時制の一致について

[発表要旨]

 ドイツ語史の古い段階では、副文に現われた接続法の時制を主文の時制に合わせるという、いわゆる時制の一致の規則があった。現代ドイツ語では主文と副文の間にこのような時制のつながりはない。時制の一致の規則がいつ、どのように崩れたのかを通時的に考察し、それがドイツ語にとってどういう意味を持つのかを明らかにするのが、本研究の最終目標である。その第一段階として本発表では16世紀の状況を明らかにしたい。古い言語では当該の動詞が接続法かどうかの判断が現代語よりいっそう難しい。このような形態論的な問題をどう処理するかについて論ずるほか、コルプスに関しても言及したい。


研究発表2
発表者:長友 雅美 氏 (東北大学)
題目:Warum schreibt man heute nicht, wie man spricht?

[発表要旨]

 「話すように綴れ”Schreibe, wie du spricht!”」とはアーデルング以来,ずっとドイツ語の表記に関係してきた人々にとっては,実現しえぬ願望である。「書記素Graphem(字母と呼ばれることもある)」と「音素Phonem」との間の様々な問題が山積しているとはいえ,少なくとも標準ドイツ語育成のため,あるいは教育的もしくは愛国的な意味で数多くの提案が正書法について出され,それに基づき,今日まで幾度も正書法辞典が刊行されてきた。もっともこのアーデルングの秀案が現実にはあまり考慮されていない理由(こと)も,ドイツ語史や辞書学史の文献を紐解けば理解できる。これはどんなに書記法を考えても,音と文字もしくは文字と音との厳密な対応が困難であることに起因する。
各方言変種も含め,教育言語として取り扱われている標準語ですらも,話ことばのレベルともなれば様々な要因で多種多様に発音が変化しているのに対し,書きことばのレベルでは書記媒体によって当然固定化されあるいは標準化されてしまい,結果として話ことばの変化は綴りには反映されることはかなり稀である。極言すれば,どのような書記素を用いても,話ことばの発音を忠実に再現するのは不可能と言ってよいかもしれない。だとすれば,アーデルングの原則はあくまで「そうあって欲しい」という願いなのか。
今回の発表では,教育言語としてのドイツ語ではなく,特定地域密着のドイツ語の方言変種を考えた場合,現実に耳にする音の集合体としての自然会話を記述し,印刷記述媒体として伝承していく場合に,一定の書記法つまり正書法が必要なのか,その場合何が問題となるのかいったことを標準ドイツ語の正書法改革の流れとともに,我々が再考するための契機となればよいと考える次第である。


定例総会

第70回例会

日時:2009年12月12日(土) 13:30~17:30
場所:京都ドイツ文化センター
<<内容>>

研究発表会

司会者:金子 哲太 氏(関西大学非常勤講師)

研究発表1
発表者:米田 繭子 氏 (京都大学院生)
題目:類推作用と脚韻の関係―英語の音節構造を通して―

[発表要旨]

 「類推」とは、ある狭い範囲内で多数の個人が自発的に同一の形態を創造し、後にそれが一集団に支持され、そしてその結び付きが強化されるにつれて社会全体に広まるという段階を踏む現象のことをいう。先行研究ではこの「類推」が動詞群の移行を促進したと捉えられているが、この現象について具体的な考察はなされてこなかった。ゆえに、何が原因となって類推作用が動詞群の移行に働いたのか考究していく必要がある。本発表では狭い範囲に生じる類推作用をみるため韻文に限定する。そして音節構造の観点から類推作用が引き起こされる原因を分析し、脚韻との関与を示す。さらにさまざまなテクストの脚韻箇所に注目し、時代的用例に基づいて動詞の移行に類推が機能していたことを明らかにすることが今回の研究発表の主たる目的である。


研究発表2
発表者:伊藤 亮平 氏(広島大学院生)
題目:ドイツ中世抒情詩ミンネザングにおけるラインマル・デア・アルテの位置づけ

[発表要旨]

 本発表では、12世紀後半のミンネゼンガー、ラインマル・デア・アルテを取り上げる。ラインマルは「高きミンネ」の発展に大きく寄与し、『トリスタン』の作者ゴットフリート・フォン・シュトラースブルクからも「ハーゲナウの小夜鳴鳥」と評された歌人であった。
しかし、今日ではヴァルター・フォン・デア・フォーゲルヴァイデとの文学的論争におけるヴァルターの論争相手として言及されることが主である。そこで本発表では、主要なミンネゼンガーの作品を例に挙げながら、ミンネザングの変遷を概観するとともに、文体、ジャンル、内容の点からミンネザングにおけるラインマルの新たな位置づけを試みたい。


研究発表3
発表者:筒井 友弥 氏(京都外国語大学)
題目:心態詞malの意味と用法について

[発表要旨]

 本発表では、主に「命令」や「依頼」の発話で頻繁に使用される心態詞malに注目する。第一に、意味的な考察として、心態詞malの派生元である時間副詞einmal、およびその語彙形成に関係する頻度副詞としてのeinmalに焦点を当て、これまで扱われてこなかった心態詞malの基本的意味を抽出する。第二に、語用論的分析として、心態詞malが行為指示型の発話で用いられ、その「要求」に丁寧な性格を付与するという機能に着目し、アンケート調査の結果に基づいて、少なくとも話法助動詞könnenを伴う決定疑問文では、その機能が発揮されないことを示唆する。本発表の目的は、このような分析を通して、心態詞malの意味と用法を明らかにすることである。


2.臨時総会

第69回例会

日時:2009年9月19日(土) 13:00~17:00
場所:京都ドイツ文化センター
<<内容>>

研究発表会

司会者:吉村 淳一 氏(滋賀県立大学)

研究発表1
発表者:富永 晶子 氏 (京都大学院生)
題目:ドイツ語母語話者と日本人学習者における発話上のリズム調整

[発表要旨]

 本発表はドイツ語の「ドイツ語らしさ」を「音」の観点から考究する。その際に、ドイツ語の母語話者と日本人学習者を比較対象にして、フットで区分された各音節のリズム調整の実態を考える。
発表者はすでに、発話上の「ドイツ語らしさ」を明らかにするひとつのアプローチとして、フット内の強・弱勢音節の持続時間を調整することで、各フット間の時間的均等が指向されるとする「時間補償」について考察し、「時間補償」を妨げる素因に日本人学習者の母語干渉を想定した。
本発表では特定の名詞と分離動詞を用い、発話文の統語パターンによる持続時間の調整が、ドイツ語母語話者に及ぼす蓋然性を考察し、またドイツ語の修得に差がある日本人インフォーマントの相互間において、統語構造と母語干渉の関連が認められるかどうかについても論じる。


研究発表2
発表者:磯部 美穂 氏(大阪市立大学非常勤講師)
題目:テクストにおける新造語――名詞複合語の形成過程とその意味解釈――

[発表要旨]

 新造語(Wortneubildung)とは、テクストにおいて即席に新しく形成される語で、また、その後他のテクストにおいて同一の意味で使用されることはなく、語彙として辞書に掲載されることのない語のことをいう。新造語は単に新しい事柄を命名するためだけに形成されるのではなく、その語形成はテクスト構成上重要な役割を担っており、テクスト理解の際にキーワードとなる概念の理解を助ける。本発表ではこうした機能に着目し、新造語の形成過程とその意味解釈の際における、新造語とコンテクストとの相互作用を例証する。造語法の中でも生産性が高く、構成語間における意味関係のモデル化が困難とされる名詞複合語を分析の対象とする。


研究発表3
発表者:Dieter Trauden 氏(京都大学)
題目:Mehrsprachigkeit in mittelalterlichen Texten
―― unter besonderer Berücksichtigung des Schauspiels ――

[発表要旨]

Mehrsprachigkeit in literarischen
Texten wird heute vor allem als Phänomen der Moderne und Postmoderne unter Stichworten wie
Kolonialismus, Globalisierung und kultureller Hybridisierung diskutiert. Aber bereits im
Mittelalter gab es viele Texte, die hauptsächlich lateinische, aber auch z.B.
französische, italienische, tschechische oder hebräische Passagen bzw. Ausdr&uumlcke
in ein deutschsprachiges Umfeld integrierten. Auf welche Weise dies (insbesondere in
Dramentexten) geschah und was für Gründe und Intentionen sich damit verbanden, ist
Thema dieses Vortrags.

第68回例会(研究発表会)

日時:2009年5月23日(土) 13:00~17:00
場所:京大会館 S・R室

<<内容>>

1.シンポジウム
Aspekte der Grammatikalisierung

招待講演
講師:Bernd HEINE 氏(Universität zu Köln)
題目:Zwischen Diachronie und Synchronie: Grammatikalisierung im Deutschen.

[要旨]

 Die Frage, wie menschliche Sprache
erklärt werden kann, hat unterschiedliche Forschungsansätze beschäftigt. Für
funktionale Sprachwissenschaftler ist vorrangig die folgende Frage von Interesse: Warum ist
Sprachstruktur so strukturiert wie sie ist? Dieser Frage soll anhand von Beispielen aus dem
Deutschen nachgegangen werden. Insbesondere wird dabei argumentiert, dass es nicht möglich ist,
eine annähernd zufrieden stellende Antwort zu finden, wenn man sich auf eine synchrone Sicht
der Sprachbetrachtung beschränkt. Vielmehr zeigt die Grammatikalisierungsforschung der letzten
Jahre, dass die dynamischen Prozesse in der Interaktion zwischen Kognition und Kommunikation in
bedeutender Weise die Strukturen der deutschen Sprache geprägt haben. Besondere Aufmerksamkeit
soll in dem Vortrag die Beziehung zwischen nominalen und verbalen Strukturen der deutschen Grammatik
finden.


研究発表
発表者:Nami KOMODA(薦田奈美)氏(京都大学院生)
題目:Eine Betrachtung des Bedeutungswandels aus Sicht der
kognitiven Linguistik.


研究発表
発表者:Tetta KANEKO(金子哲太)氏
(関西大学非常勤講師)
題目:Einige Bemerkungen über die Grammatikalisierung der
Konstruktion “haben + Partizip Präteritum”.


研究発表
発表者:Shuichi HONDA(本多修一)氏
(福岡大学院生)
題目:Die Degrammatikalisierung des Präfixes “ge-” beim
Partizip Perfekt―Am Beispiel der Perfektformen im Niederdeutschen―.


研究発表
発表者:Norio SHIMA(島 憲男)氏 (京都産業大学)
題目:Vielfältigkeit der resultativen Konstruktionen im
Deutschen: Ein Erklärungsversuch ihrer Genese.


定例総会

第67回例会(研究発表会)

日時:2008年12月13日(土) 13:00~17:00
場所:京都産業大学サテライト第2講習室(キャンパスプラザ京都6階)
<<内容>>

1.シンポジウム 「ルクセンブルクの言語文化と言語意識」

[シンポジウム要旨]

 ルクセンブルクはフランス語、ドイツ語、ルクセンブルク語の三言語を公用語とする多言語国家である。中でもルクセンブルク語は、1984年のいわゆる「言語法」によってその地位が確立された新しい言語である。大半のルクセンブルク人が母語とするルクセンブルク語は、元来、書きことばとして用いられることがほとんどなかったが、近年、児童文学を初めとする分野でルクセンブルク語の使用が増加している。
現在、ルクセンブルクの人口の40%以上が南欧諸国出身者をはじめとする外国人である。さらに、多くの国際機関や国際企業がルクセンブルクに拠点を構えており、人口わずか45万人強のこの国は、日常的に多言語、多文化が接触し、共生している。
このような独特な言語文化のこの国では、「ルクセンブルク人」としてではなく、むしろ「ヨーロッパ人」であるというアイデンティティを持つ人の割合が他の欧州諸国に比べてはるかに高い。しかし、一方では、外国出身者を含めた国民の統合の象徴として、ルクセンブルク語の存在意義は高まっている。
本シンポジウムでは、19世紀初頭から現在までのルクセンブルクの言語文化と言語意識について、それぞれの時代における言語文化を異なる視点から考察する。その上で、ルクセンブルクないしルクセンブルク人におけるルクセンブルク語の位置づけと、その根底に流れるルクセンブルク人意識について明らかにしていくことを主な目的としている。

基調講演
講師:ジャン・クロード・オロリッシュ 氏 (上智大学副学長)
題目:現代のルクセンブルクにおける言語文化とルクセンブルク人意識

[要旨]

 ルクセンブルクの地では、歴史的に見てもさまざまな文化が出会い育まれてきた。本講演では、とりわけ19世紀以降のルクセンブルク文化とルクセンブルク人意識について紹介し、ルクセンブルク人アイデンティティ形成の背景について述べる。


報告1
報告者:田原 憲和 氏(大阪市立大学非常勤、大阪市立大学UCRC研究員)
題目:19世紀におけるルクセンブルク語の「発見」とディックス・レンツ正書法

[要旨]

 ルクセンブルク語は元来モーゼルフランケン方言に分類されるドイツ語方言の1つであるが、19世紀前半になりいくつかの方言文学が生まれた。本発表では、ルクセンブルク語正書法策定に際して生じた言語観を巡る論争から、当時の言語意識について探る。


報告2
報告者:小川 敦 氏(一橋大学院生)
題目:第二次世界大戦以降のルクセンブルク語とルクセンブルク人意識

[要旨]

 ルクセンブルクにおける言語意識には、19世紀終わりから今日まで一貫して、多言語主義と母語意識という2つの方向性が見られる。本発表では、ナショナリズムとともに母語意識の高揚が見られた第二次大戦後の言語意識の特異性と連続性について考察したい。


報告3
報告者:木戸 紗織 氏(大阪市立大学院生)
題目:EUが掲げる言語理念とルクセンブルクにおけるその実践 ― アイデンティティのグローバル化とローカル化 ―

[要旨]

 EUは多言語主義の理念を掲げ、複言語教育を推進する施策を行っている。しかし、既にそれを実践しているルクセンブルクでは、グローバルなアイデンティティとローカルなアイデンティティが交錯している。本発表では、このアイデンティティの分裂と融合について考察する。


報告4
報告者:田村 建一 氏(愛知教育大学)
題目:ルクセンブルクにおける語学教育の現状と問題点

[要旨]

 ルクセンブルクでは三言語による学校教育が行われているが、国民の母語であるルクセンブルク語教育が不十分であること、外国出身者の子弟にとって負担が大きいことなどの問題点が指摘されている。本発表では、昨年に教育省がまとめた今後の「言語教育の指針」について考察する。


2.全体討論

第66回例会

日時:2008年9月20日(土) 13:30~17:30
場所:京都ドイツ文化センター
<<内容>>

研究発表会

司会者:河崎 靖 氏(京都大学)

研究発表1
発表者:井上 智子 氏 (京都大学院生)
題目:心態詞 dochの歴史的考察 ―中高ドイツ語を主に―

[発表要旨]

 心態詞は、通常ドイツ語で文法カテゴリーと見なされるよりむしろ、話者の心的状況を示す語彙カテゴリーとして扱われている。このような語彙カテゴリーは、対話を循環させるのに重要な役割を果たす。本発表では、現代ドイツ語において心態詞として多様に用いられながらも1970年以降コミュニケーション理論が発展するまで注目されてこなかった、とりわけdochを取り上げ、歴史的に考察する。その際、中高ドイツ語の作品『哀れなハインリヒ』を中心に、dochがどのように使用されていたのか、文脈から観察すると共に写本での表れ方も考慮し、データを用いて実証的に検証したい。


研究発表2
発表者:安永 昌史 氏(フランクフルト=ゲーテ大学院生)
題目:トカラ語とはいかなる言語か?―ゲルマン,スラヴ,インド=イラン語等との言語特徴的な諸側面の対比による、その印欧語的性格の再描写―

[発表要旨]

 中央アジア東部において千年以上前に話されていたトカラ語(A, B方言)は、他に同じ語派を形成する言語が確認されない、孤立した印欧語の一つである。これはすなわち、祖語を経由しなければ、トカラ語は他の印欧諸語との語源的な近縁関係を持たないことを意味する。しかしながら、それは他の言語から見てトカラ語が極端に異質であることを意味するのではない:トカラ語に見られる幾つかの言語構造的な特徴が、語派の壁を越えて他の印欧諸語にも当然見られるのである。本発表では、トカラ語の音韻,形態,統語ならびに語彙的な特徴の幾つかを採り上げ、ゲルマン,スラヴ,インド=イラン語派等におけるそれらと対比することにより、トカラ語の印欧語的性格を今一度、見つめ直すきっかけとしたい。


研究発表3
発表者:尾崎 久男 氏(大阪大学)
題目:英語における借用翻訳の通時的考察:dépendre dedepend ofdepend onか?

[発表要旨]

 英語の歴史上、フランス語の影響は絶大であり、英語は単語レベルのみならず、句や節レベルまで借用してきた (後者の例としてit goes without saying that(<cela va sans dire que) が挙げられよう)。確かにtake part inに注目しても、類似表現がフランス語 (prendre part á) に存在するため借用翻訳のようである。ところが、通時的に古英語dael-niman(ドイツ語teil-nehmenを参照)も考慮すべきであり、英語本来の語法をフランス語の単語によって置換したに過ぎない。結局、ある表現が別の言語の借用翻訳だという結論は容易に導き出せなくなる。本発表では、英語における動詞句レベルの借用翻訳を通時的な観点から再考してみたい。


臨時総会

第65回例会

日時:2008年5月31日(土) 13:30~17:30
場所:京都ドイツ文化センター
<<内容>>

研究発表会

司会者:齋藤 治之 氏(京都大学)

研究発表1
発表者:片岡 宜行 氏 (福岡大学)
題目:動詞付加辞の機能について

[発表要旨]

 ドイツ語の不変化詞動詞(分離動詞)に関する近年の研究では、不変化詞動詞が「動詞付加辞(不変化詞・分離前綴り)+動詞」という複合的なまとまりとして捉えられ、「前置詞句+動詞」などと平行的なものとして論じられることが多い。動詞付加辞が前置詞句と対応・競合するものであるならば、動詞付加辞を基礎動詞に付加することによって文の構造に変化が生じることになる。例えばden Zettel an die Wand kleben という句を不変化詞動詞を用いて den Zettel anklebenと言い換えると、前置詞句が消失し、項が一つ減少することになる。本発表では、このような文構造の変化を中心に、動詞付加辞のもつ機能について考察したい。


研究発表2
発表者:阿部 美規 氏(富山大学)
題目:正書法改革の改革について―分かち書き・続け書き規則の場合―

[発表要旨]

 ドイツ語のいわゆる新正書法は、「正書法改革の改革」とまで呼ばれた大幅な規則改変を経て、2007年8月1日、当初の予定より遅れること2年の後にようやくドイツにおける正書法上の唯一の拠りどころとなるに至った。これをもってドイツ語正書法をめぐる問題は一応の解決をみたわけであるが、一方で、度重なる規則変更の結果、最終的にどのように綴るのが正しいのか、多くの人にとって必ずしも明確ではなくなったこともまた事実であろう。このような現状に鑑み、本発表ではドイツ語新正書法規則の中でも特に混乱を極めた「分かち書き・続け書き規則」が、新正書法導入以後現在に至るまで、いかなる理由からどのように変更されたのか、またそれによってどのような問題が解決されたのかなどの点を明らかにすることで、正書法に纏わる混乱ないし不安の一端を解消することを試みたい。


定例総会

第64回例会

日時:2007年12月15日(土) 13:30~17:30
場所:京都ドイツ文化センター
<<内容>>

研究発表会

司会者:金子 哲太 氏(関西大学非常勤講師)

研究発表1
発表者:長縄 寛 氏 (関西大学非常勤講師)
題目:英雄叙事詩『クードルーン』に見られる定関係代名詞構文について

[発表要旨]

 定関係代名詞derによって導入される関係文は、おおむね上位文中の名詞成分(=先行詞)をより詳しく説明する副文と理解されるが、中高ドイツ語期にはこのような用法の他にも様々なタイプの関係文が存在していた。例えば先行詞を自らに含み、その機能を兼ねるものや、関係代名詞の格が先行詞の格
(あるいはその逆) に合わせられる牽引(Attraktion)のケース、また関係代名詞によって導入された形式上の関係文が意味上の条件文(wenn einerの意)となることもまれにある。さらに中高ドイツ語期は、副文中の定動詞を後置させることによって主文中の動詞語順との区別をなすという規則が一般化する以前の中間段階にあたり、一般的に副文の定動詞は少なくとも主文の定動詞よりも後方に置かれていたようである。しかし『クードルーン』のような韻文作品では各詩行末の語が押韻に用いられるため、動詞以外の語によってこの位置が占められれば、特に短い関係文では主文の動詞と同様の語順を取らざるを得なかったという可能性もある。本発表では『クードルーン』に見られる定関係代名詞構文に関して、上で挙げたような諸特徴、問題点を、具体的に例を示しながら明らかにしたいと思う。


研究発表2
発表者:塩見 浩司 氏(関西大学非常勤講師)
題目:ゴート語動詞接頭辞の意味に関して

[発表要旨]

 ゴート語の動詞接頭辞を取り扱うに際して、これら接頭辞には単純動詞に語彙的な意味を与えるものと、ある一定の動作のあり方を与えるものがあるのはよく論じられるところである。例えば前者ならqiman(nhd. kommen) : gaqiman (nhd. zusammenkommen)、後者ならswiltan (nhd. im Sterben liegen) : gaswiltan (nhd. sterben)のような場合である。今回の発表では後者のものに焦点をあててゴート語動詞接頭辞に関していくつかの問題点を考えてみるが、ga-以外の接頭辞にも焦点をあててみたい。またそのほかに新約聖書の翻訳という観点からも多少の言及をすることになるだろう。


研究発表3
発表者:牧野 節子 氏(関西外国語大学非常勤講師)
題目:音楽と言語―音楽と言語とのたえざる対決としての西洋音楽史―

[発表要旨]

 西洋音楽における音楽と言語の関連について考察する際に、T.G.ゲオルギアーデスの著書『音楽と言語 (Musik und Sprache)』を避けて通ることはできないであろう。ゲオルギアーデスは『音楽と言語』の中で、ミサ作品を取り上げながら、二つの異質な音楽観がそれぞれお互いを主張しあうプロセスとして西洋音楽の歴史を解説している。その音楽観とは、「装飾しての音楽」つまり器楽的な考え方と、「言葉の具現としての音楽」という二つの態度なのである。
本発表では実際の音楽例を用いて、上記の二つの音楽観が綜合されていくプロセスに焦点をあてながら、音楽と言語の関わりについて考察する。


臨時総会