場所:キャンパスプラザ京都6階 京都大学サテライト講習室(第8講習室)
<<内容>>
研究発表会
司会者:筒井 友弥 氏
研究発表1
発表者:磯部 美穂 氏(信州大学)
題目:否定接頭辞 un- の造語モデル再構築の試み
[発表要旨]
本研究では、接頭辞 un-のこれまでの造語モデル(結合する語の品詞や形態的特徴と造語意味)を検証し、実際の使用例と対照させながら、改めて造語モデルを構築していくことを目的としている。「否定接頭辞(Privativprafix)」と呼ばれる接頭辞un- の造語意味は、結合する基礎語の意味の否定・反義をあらわすと説明されるが、全ての派生語にその意味解釈が当てはまる訳ではない。独和辞典には接頭辞 un- を語頭に置く1000 語を超える派生語が見出し語として掲載されているのは、その造語法としての生産性の高さと造語モデルの複雑さによるものである(参照『アクセス独和辞典』第三版(2018))。本研究では、辞書に掲載されている un- による派生語の見出し語を整理し、un-の造語モデルの再構築を試みる。それを基にテキストにおける特徴的な語法について考察をおこなう。
研究発表2
発表者:黒田 廉 氏(富山大学)
題目:学習独和辞典におけるコーパスの活用とその限界
[発表要旨]
ドイツ語学の研究において、コーパスを使った調査・分析は一般的となってすでに久しい。コーパスの教育面への応用的成果物として、頻度リスト、コロケーション辞典も出版されるようになった。しかし、日本でドイツ語を学習する際に、もっとも入手しやすく、よく用いられると思われる学習独和辞典においては、コーパスの利用は一般的とは言えず、コーパス利用を謳う辞書でも、使い方はかなり限定されたものにとどまり、十分に活用されているとは言えない。
本発表では、学習独和辞典について、語の重要度および用例記述の面を中心に、コーパスの分析結果からみた問題点を指摘しつつ、コーパスを辞書執筆に活用する可能性とその限界を示す。
第37回言語学リレー講義
講師:根本 道也 氏(九州大学名誉教授)
題目:「独和辞典」編纂半世紀の体験から ―ドイツ語学習の魅力を伝えたくて―
[要旨]
戦後ドイツ語の学習目的が「学術論文解読」から「一般教養」に変ったことを受けて、私共は「新修ドイツ語辞典」(1972)(現「アポロン独和辞典」)を編んだ。ドイツ語も日本語もそれを使う人々の「暮らし」に根差しており、発話心理にも違いがある。独和辞典編纂では、それを踏まえた上でドイツ語から日本語へ正確にかつ分かりやすく橋渡しをしなければならない。終着点の見えないその作業は今も続く。
「ドイツ研修旅行」の参加学生たちは、逆に日本語で考えたことをドイツ語に直訳しようとして、しばしばとまどう。しかしドイツ人の生活感覚や発話の仕方に接するにつれて、徐々に「ドイツ語の心」でドイツ語を使うことに慣れていく。
日本での平常の授業でも類似の効果をあげられないものか。一例を示してみたい。