第96回例会

日時:2018年9月22日(土)13:30 ~ 17:00
場所:キャンパスプラザ京都6階 京都大学サテライト講習室(第8講習室)

<<内容>>

研究発表会

司会者:筒井 友弥 氏

研究発表1
発表者:羽根田 知子 氏(京都外国語大学)
題目:「省略形」としての名詞文体

[発表要旨]

 
作文の授業などで、「ご招待下さってありがとうございます」をドイツ語に訳させると、学習者は大抵「ご招待下さって」の部分を動詞的に訳そうとする(Ich danke Ihnen für die
Einladung.の代わりにIch danke Ihnen (dafür), dass Sie mich eingeladen haben.のように)。名詞文体はHans Eggers (1973)の『20世紀のドイツ語』(岩崎英二郎訳)以降、短い文章内に多くの情報を詰め込む新聞記事などの文体として、また機能動詞構文として議論されることが多かったように思われるが、本発表では名詞文体を「省略形」として捉え、日本語の動詞的表現対ドイツ語の非動詞的表現を日常的な表現において概観し、さらに名詞化不定詞 Einkaufenと動作名詞 Einkaufの使い分けについて、共に用いられる冠詞の用法と関連させながら考察する。


研究発表2
発表者:井口 靖 氏(三重大学)
題目:モダリティを考え直す

[発表要旨]

 
モダリティの定義は研究者によってさまざまであるが、モダリティという概念を使う利点があるとすれば、話し手の心的態度に関わるとすることにより、さまざまな現象に統一的に説明を与えることができるからであろう。たとえば、疑問や否定の対象にならない、過去を表現しない、従属文中の使用に制限がある、などがあげられる。ドイツ語では、動詞の法、話法の助動詞、話法詞、心態詞などがモダリティ表現とされるが、それら制限にそぐわないこともあり、そもそも話し手の心的態度の表現なのかどうか疑いたくなる場合も多々ある。今回は問題点を整理した上で、そもそもモダリティ表現とはどういう存在なのかということを根本的に考え直してみたい。

 


第36回言語学リレー講義
講師:福岡 四郎 氏(関西大学元教授)
題目:ドイツ語史の時代区分 ―特にFrühneuhochdeutschについて―

[要旨]

  ドイツ語史の四分割を提起したW. Scherer以後、ドイツ語史に関わる書籍が入門書も含め20冊以上出版されている。それらを順に紹介し、次にどのように時代区分されてきたかを説明する。J. Grimmがドイツ語の歴史をAlthochdeutsch, Mittelhochdeutsch, Neuhochdeutschと三分割したが、Schererはその著Zur Geschichte der deutschen Sprache (1875)
のなかで次のような新たな時代区分を加えた:eine Übergangs- oder Frühneuhochdeutsche Zeit (1350 –
1650)。最近の殆どの語史はFrühneuhochdeutschの時代区分を採用しているが、これを認めず、Neuhochdeutschの時代を1450年や1500年からとする学説もあり、各々の主張を紹介する。

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