第91回例会

日時:2016年12月17日(土)13:30 ~ 17:00
場所:キャンパスプラザ京都6階 京都大学サテライト講習室(第8講習室)
<<内容>>

研究発表会

司会者:金子 哲太 氏(京都外国語大学)

研究発表1
発表者:安田 麗 氏(大阪大学)
題目:語末閉鎖子音の発音について―ドイツ語と英語の音声的類似語を対象にした生成実験の報告―

[発表要旨]

 ドイツ語では語末にある有声閉鎖子音/b//d//g/は,無声閉鎖子音として発音される。したがって、Badとbatはともに[ba:t]、wegとWeckはともに[vɛk]となり、原則として両者は同じ発音になる。このような音韻規則は英語にはなく、英語のbad [bǽd]とbat [bǽt]、wig[wıg]とwick[wık]の発音はそれぞれ語末閉鎖子音の有声・無声の対立を成している。このように英語とドイツ語の音韻規則には違いがあるが、日本人ドイツ語学習者の多くは中等教育過程においてすでに英語を学習し、その後ドイツ語の学習を始めるため、ドイツ語の発音においても英語の影響が見られる可能性が考えられる。そこで日本人ドイツ語学習者のドイツ語の発音では実際に語末閉鎖子音をどのように発音しているのかを生成実験を行い調べた。


研究発表2
発表者:岡部 亜美 氏 氏(京都大学大学院生)
題目:ドイツ語とオランダ語の所在動詞の体系的比較―liegen/liggen, stehen/staan, sitzen/zittenを対象に―

[発表要旨]

 ドイツ語とオランダ語は、複数の動詞を使い分けて物体の所在を表現する。このとき用いられる一群の動詞を所在動詞と呼ぶが、これら所在動詞の中で特に中心的な位置を占めるのが(de) liegen/ (nl) liggen, (de) stehen/ (nl) staan, (de) sitzen/ (nl) zittenである。本発表はこれら3種の動詞を対象に、ドイツ語とオランダ語における所在動詞の用法の差異を明らかにしようとするものである。研究手法としてはアンケートを用い、物体間の位置関係を記述する場合と、物体と人間(身体の一部)の位置関係を記述する場合の二つを分けて調査を行った。この際、(de) sitzen/ (nl) zittenの振る舞いにおいて、両言語は顕著な違いがあることが予想される。また調査結果は、所在動詞体系の中で論じる必要があることも指摘したい。

 


研究発表3
発表者:小川 敦 氏(大阪大学)
題目:ルクセンブルクにおけるドイツ語識字教育の問題点と施策

[発表要旨]

 ルクセンブルクでは、幼児教育にはルクセンブルク語が用いられるが、初等教育ではルクセンブルク語が第一言語であることを前提としてドイツ語で識字が行われる。また、教育の媒介言語もドイツ語である。フランス語教育は小学校2年生から導入される。一方、移民は増え続け、現在、人口約57万人のうちの47%、約27万人が外国籍である。それにともないルクセンブルク語が第一言語という前提は大きく崩れ、ドイツ語による識字教育には大きな疑問が投げかけられている。ドイツ語教育が社会階層の再生産や固定化を促し、機会均等を奪っていることも指摘される。本発表では、ルクセンブルクの言語教育の問題点を指摘した上で、現在とられている施策や現場での工夫を紹介する。特に、2013年末の政権交代後の施策や展望についても考えたい。

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