第88回例会

日時:2015年12月12日(土)13:30 ~ 17:00

場所:キャンパスプラザ京都6階 京都大学サテライト講習室(第8講習室)

<<内容>>

研究発表会

研究発表1
司会者:吉村 淳一氏(滋賀県立大学)
発表者:細川 裕史氏(阪南大学)
題目:新聞における『第三帝国の言語』―キリスト教との類似性および話しことば性の観点から―

[発表要旨]

V.クレンペラーは、『第三帝国の言語』(1947)のなかで、ナチスによる熱狂的なことばづかいを「説教者」のことばに例えた。彼によれば、「第三帝国の言語」はキリスト教のことばを模倣したものであり、また一貫して「話しことば」だった。実際に、ヒトラーの演説を対象としたDube(2004)においては、キリスト教的な語彙の使用が頻繁にあったことが指摘されている。そこで、本発表では、ヒトラーが演説とならんでプロパガンダのための武器として重視した新聞を対象に、そこで使用されるキリスト教的な語彙の頻度を調査し、また印刷メディアである新聞にどの程度の「話しことば性」がみられるのかも考察する。


研究発表2
司会者:金子 哲太氏(京都外国語大学)
発表者:長縄 寛氏(関西大学非常勤)
題目:時、条件の従属接続詞sô, alsô, alsについて

[発表要旨]

中高ドイツ語のalsôはsôに強調のalが付加されたものであり、本来?ganz so“「まったくそのように」の意の様態を表す副詞であった。そしてalsは語末のôが消滅したもので、これも本来はalsôと同義の副詞である。その一方でsoは古高ドイツ語期から?wie“「~のような」の意の様態を表す従属接続詞としても用いられていたが、一部にはここから?als“やwenn“ 意で時や条件の従属接続詞へと発展した。中高ドイツ語期にはさらに、この機能がごく一部ではあるがalsô, alsへも引き継がれた。今日のalsは「~した時」という過去の一回的事象を表し、条件文の導入詞としてはwennを用いるが、中高ドイツ語でまだこのような区別は明確ではない。本発表では「ニーベルンゲンの歌」「イーヴァイン」「パルツィヴァール」の三作品に見られるsô, alsô, als構文を取り上げ、今日の用法とどう違うのか、また今日の用法に至る萌芽が見られないか検討したい。


研究発表3
司会者:岡部 亜美氏(京都大学大学院)
発表者:成田 節氏(東京外国語大学)
題目:ドイツ語のPassiv ―日本語の受身と比べると―

[発表要旨]

日独語の受動文に関する記述を基に、日本語の受影受動文のように主語の立場から事態を捉え、事態から受ける被影響感を表すことを中心的な働き
とするような受動文がドイツ語にはないという考えを提示する。その論拠として、ドイツ語と日本語の受動文における主語の有情性の違い、および
ドイツ語のvon-動作主と日本語の二格動作主の性質(被影響感をもたらす行為者性)の違いを挙げる。事例研究として日本語の小説から1人称
主語の受動文を取り出し、ドイツ語訳の対応箇所で1人称代名詞を目的語とする能動文が多く見られることを指摘し、被影響の観点からその原因を考察する。

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*