第86回例会

日時:2015年5月16日(土)13:30 ~ 17:00
場所:キャンパスプラザ京都6階 京都大学サテライト講習室(第8講習室)
<<内容>>

研究発表会

研究発表
司会者:島 憲男 氏(京都産業大学)
発表者:大薗 正彦 氏(静岡大学)
題目:構文の適用可能性 ―日独語の好まれる事態把握との関連において―

[発表要旨]

本発表では,次に挙げるようなドイツ語の結果構文とbekommen受動を出発点とし,日本語の類似する構文と対照しながら,1. 言語によって構文の適用可能性――つまり,特定の構文がどのような状況の表現にまで適用され得るのか――が異なること,2.しかしながらその相違は言語全体の体系の中で十分に動機づけられていると見なすことができる,という二点を述べる。

(1) a. Hans hat den Boden kaputt getanzt.
b. *太郎は床をボロボロに踊った。
(2) a. *Hans hat den Apfel gegessen bekommen.
b. 太郎はリンゴを食べてもらった。
c. 太郎はリンゴを食べられた。

一見関わりのなさそうな両構文であるが,両者とも基本的に「人」を主語とする構文であり,「人」と「事象」が言語レベルでどのように関連づけられるのかという点において興味深い視点を提供するものである。


第33回言語学リレー講義
司会者:金子 哲太 氏(京都外国語大学)
講師:武市 修 氏(関西大学名誉教授)
題目:中高ドイツ語叙事文学の表現技法

[発表要旨]

言語は常に変容するものであるが、ドイツ語は8世紀半ば頃ゲルマン語派の中から英語などとはっきりと分かれ始め、それ以来ほぼ300年の周期で大きな変化を経て今日の形になってきたと言われる。最初期の古高ドイツ語期は、主として福音書などキリスト教の文献をラテン語などから翻訳することが中心であった。やがて騎士による騎士のための世俗の文学が宮廷で花開く。フランス文学に範を取る脚韻文学の時代で、詩人たちは詩行のリズムを整え行末で押韻するという制約の中で簡潔に美的世界を描出することに心血を注いだ。中高ドイツ語と呼ばれる当時の言語はそれによって大いに洗練された。本発表では、当時の脚韻文学の言語的特徴を、時に今日のドイツ語との関連を見ながら、tuon (nhd. tun)の代動詞用法を中心とした迂言表現(=言い換え表現)と縮約形を中心としたさまざまな語形および否定表現の三つの観点から紹介したい。


定例総会

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