場所:キャンパスプラザ京都6階 立命館大学サテライト講習室(第1講習室)
<<内容>>
研究発表会
研究発表1
発表者:鈴木 智 氏 (立命館大学)
題目:グローバルな人材とは?―ドイツ語授業における「ランデスクンデ学習」とその可能性
[発表要旨]
グローバル人材育成推進が議論される昨今、「使える英語」にばかり論点が置かれがちであるが、異なる文化的背景を尊重し理解に努める姿勢も不可欠である。語学力の習得だけでは、世界に通用する人材の育成とはいいがたい。これはドイツ語教育の現場にも当てはまる。
従来ドイツ語教育には「ランデスクンデ」という確立した領域があり、言語的知識の教示にとどまらない授業を重要視している。しかし生活や文化を扱った授業は学習者の興味を引きやすい一方で、ステレオタイプが再生産される危険もある。そこで本発表では、学習者自身が先入観やステレオタイプについて考え、また物事を別の視点から捉えることにより、「多様性への寛容さ」の育成を目指す授業の試みを紹介したい。学習者が持つドイツのイメージと学習歴の関係についても言及する。
研究発表2
発表者:片岡 宜行 氏 (福岡大学)
題目:動詞不変化詞の付加による文の構造と意味の変化 ― 移動動詞を例に ―
[発表要旨]
動詞不変化詞(分離前綴り)は文成分の出現条件に関わり、文の構造と意味を規定する働きを持つ。不変化詞 hin を伴う移動動詞(hingehen, hinfahrenなど)が用いられた文では、空間規定が含まれず、物理的な移動というよりも移動を伴う何らかの行為が表されている例がしばしば見られる。一方、hinauf や hinausのような二重不変化詞が動詞に付加された文では、空間規定が含まれ(もしくは想定され)、物理的な移動が表されている例が多い。
( … ), und wir hatten Blumen gekauft und waren hingefahren. (H.Böll)
Er nickte und ging die Treppe hinauf. (同上)本発表では、hin, hinauf, auf などのように相互に関連する動詞不変化詞の比較対照を中心に、動詞不変化詞と文の構造・意味の関係について考察したい。
第31回言語学リレー講義
発表者:家入 葉子 氏 (京都大学)
題目:英語の否定構文研究とその応用
[発表要旨]
英語の否定構文の史的発達は、その変化が大きいことで知られている。古英語期(~1100年頃まで)には動詞の前にneを付加することで否定構文を作ったが、古英語の終わりごろから新たな否定の副詞notが導入され、動詞をneとnotではさむ形式が発達した。その後、neが脱落し、さらに助動詞doが導入されて今日に至っている。本発表では、構文の変化が著しい中英語期(1100年頃~1500年頃)から初期近代英語期(1500年頃~1700年頃)を中心に、まず否定構文の発達を概観する。さらに、否定構文の詳細を分析することで文献資料の性質を明らかにすることができる点にも議論を進めたい。否定構文の発達は文体、地域など、さまざまな要因と連動している。否定構文を一つの指標とすることで、文献とその背景との関連性を明らかにすることが可能となろう。
定例総会