第77回例会

日時:2012年5月26日(土)13:30 ~ 17:30

場所:キャンパスプラザ京都6階 京都大学サテライト講習室(第8講習室)

<<内容>>

研究発表会

研究発表1
発表者:田中 翔太 氏 (学習院大学大学院生)
題目:ドイツのTVメディアにおける『トルコ系移民のドイツ語』―『役割語』という観点から―

[発表要旨]

ドイツでは現在、移民背景を持つ者が多く生活している。そのなかでも1960年代からドイツへ来たトルコ系移民は、ドイツの外国人人口でも群を抜き、最も多い割合を占めている。トルコ系移民の第二、第三世代が話すドイツ語は、トルコ系移民の出自を持つ文学者Feridun Zaimogluが出版した『カナーケの言葉:社会の周縁の24の雑音』 (1995)によりドイツ社会で注目を集めた。それを転換期として、元々ドイツ人から「ブロークンなドイツ語」としてネガティブな評価を受けてきた「トルコ系移民のドイツ語」が、coolであるなどと、ポジティブな評価を持って用いられるようになった。このようなドイツ社会からの評価の変化要因のひとつとして考えられるのが、2000年代初め頃からドイツのTVメディアにおいて需要が増加した、コメディ番組である。今発表では移民をテーマとしたコメディ番組Ethno-Comedyに注目し、伝える側と受け取る側のことばを観察する。その際、ドイツ社会において移民に課せられた言語的役割について、金水(2003)による「役割語」という観点から考察していく。


研究発表2
発表者:岩崎 克己 氏 (広島大学)
題目:日本のDaFにおけるドイツ語基礎語彙へのアプローチ

[発表要旨]

基礎語彙選定の代表的な手法としては、頻度を選択基準とするコーパス言語学的なアプローチやコミュニケーション場面を想定し、そこでの重要性を選択基準とするコミュニカティブなアプローチなどがある。しかし、日本のドイツ語教育において基礎語彙を考える際には、「大学や高専等の教養教育の枠組みにおいて、主に学生を対象として週1~2回、1年間程度実施される」という日本のドイツ語教育の置かれた特殊事情も考慮する必要がある。それゆえ本発表では、上述の2つのアプローチのそれぞれによってドイツ語圏で作られた代表的な語彙リストである、Tschirner (2008) およびGlaboniat u. a. (2005)の語彙リスト、および発表者らが広島大学において作成した「広大語彙リスト(基礎語彙850語+追加語彙350語)」の3つを取りあげ、日本のドイツ語教育の文脈を踏まえたコミュニカティブ・アプローチの観点から、上記の3つの語彙リストに含まれる単語の比較を、主に動詞・形容詞・名詞に焦点を当てつつ行い、それぞれの特徴として何が言えるかを具体的に考察する。本発表では、「アプローチの違いによって上位語にはどんな違いが見られるか」、「頻度順アプローチのみに依拠しようとするとどのような問題が生じるのか」、「日本のDaFの文脈を考慮するとはどういう事なのか」、「基礎語彙の範囲と学習順序はどう関連するのか」等の問いについても論じる。


定例総会

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