場所:キャンパスプラザ京都6階 京都大学サテライト講習室(第8講習室)
<<内容>>
研究発表会
研究発表1
発表者:小川 敦 氏 (一橋大学研究員)
題目:ルクセンブルクにおける言語意識と1984年言語法
[発表要旨]
ルクセンブルクにおいては、長年2つの言語意識がコインの表裏のように併存してきた。1つは母語ルクセンブルク語に対する単一言語性の意識、もう一つはドイツ語やフランス語を使いこなすという多言語性の意識である。1984年に成立した言語法は、ルクセンブルク語が事実上の公用語とされるなど、単一言語性の意識が際だった事象としてとらえることができる。本発表では、上記の2つの言語意識が1970年代および80年代にどのような形で対立し、言語法制定という結果に至ったのか、そしてそれまでは当然とされていた「三言語併存」がいかにして政治的な文脈に乗せられていったのかという言説について見ていきたい。また、今後の研究の展望として、言語法後の社会の変化や言語をめぐる環境の変化にも言及したい。
研究発表2
発表者:高須 万祐子 氏(京都大学大学院生)
題目:格体系の弱化に伴う低地ドイツ語の統語的特徴―低地ドイツ語の分析的特徴―
[発表要旨]
本発表では、標準ドイツ語と対比することによって、格体系の弱化に伴い生じた低地ドイツ語の統語的特徴を考察し、低地ドイツ語が標準ドイツ語に比べてより分析的な言語であるということの証明を目標としている。
現代の低地ドイツ語には、格は主格と斜格の2つしか存在していない。まず、前置詞に注目し、標準ドイツ語において与格・対格支配のある前置詞が、低地ドイツ語においてはどのように表現されるのかなどを調査していく。このように、低地ドイツ語と標準ドイツ語の差異を明らかにし、低地ドイツ語が標準ドイツ語に比べてより分析的な言語であるか、という本発表で目標としている問いかけに対し、実証的に説明していく。
研究発表3
発表者:柴崎 隆 氏(金城学院大学)
題目:アルザス・ドイツ語(Elsàsser Ditsch)への招待―ミュルーズ・アルザス語の文法記述へのアプローチ―
[発表要旨]
フランス東部の国境の地、アルザス地方の言語事情については、ドーデの作品『最後の授業』を巡る論争を契機として一時期注目を浴びたが、この地で話されるドイツ語系方言そのものに関しては、ほとんどその実態は知られてこなかった。今回の発表の趣旨は、現在では存亡の危機に晒されていると言われるアルザス・ドイツ語、中でもその中核を成す低地アレマン(=上部ライン・アレマン方言)圏にあり、ストラスブールに次ぐアルザス第二の都市ミュルーズのアルザス語に焦点を絞り、隣接する諸方言との比較も踏まえて、その言語的特徴を検証することにより、中高ドイツ宮廷詩人語の直系の後裔たるこの方言の文法記述へのアプロ―チを行う。