場所:キャンパスプラザ京都6階 京都産業大学サテライト第3講習室
<<内容>>
研究発表会
研究発表1
発表者:石部 尚登 氏 (東京外大COE研究員)
題目:ベルギーのゲルマン語圏とその『方言』観
[発表要旨]
ベルギーにはオランダ語圏とドイツ語圏の2つのゲルマン語圏が存在する。両者は歴史も人口規模も大きく異なっているが、「方言」の捉え方には共通点が見られる。本発表では、そうしたベルギーのゲルマン語圏に特有の「方言」観について、言語政策の観点から、とりわけオランダ語圏を中心として報告する。域内の「方言」は、フランス語圏ではフランス語とは異なる言語として承認しているが、オランダ語圏ではあくまでオランダ語の内的変種と認識されている。このような「方言」観が、「言語戦争」の中で対フランス語のために創り上げられた政治的なものであることを示し、現在ヨーロッパで主流となっている地域語復権の動きに及ぼしている影響を明らかにする。
研究発表2
発表者:黒沢 宏和 氏(琉球大学)
題目:古高ドイツ語『タツィアーン』における翻訳手法―dixerit:
直説法未来完了形か接続法完了形か―
[発表要旨]
『タツィアーン』は、830年頃フルダの修道院でラテン語から古高ドイツ語へと翻訳された。この『タツィアーン』のラテン語テクストには、時折、語尾が-eritで終わる動詞、例えばdixerit(不定詞 dīcere;「言う」)が現れる。この語形は、1)直説法未来完了形、2)接続法完了形の二つの解釈が可能である。一方、古高ドイツ語には、直説法であれ、接続法であれ、現在形と過去形しかない。古高ドイツ語『タツィアーン』において、この語形はどう翻訳されたのであろうか。本発表では、発表者が『タツィアーン』の中から収集した、直説法未来完了形か接続法完了形か、語形の上では判別できないラテン語の43例を基にして、これらの箇所が如何に古高ドイツ語へと翻訳されているかを検証したい。
研究発表3
発表者:檜枝 陽一郎 氏(立命館大学)
題目:韻文から散文へ─『ライナールト物語』韻文版および散文版の比較─
[発表要旨]
1400年頃に成立した動物叙事詩『ライナールト物語』は、中世フランドル文学を代表する作品である。はじめ韻文で著されていたが、その後一般大衆向けの散文版『ライナールト物語』が1479年に成立した。本発表の目的は、この二つの物語を比較分析して、韻文から散文へとテクストが変わる際の脚韻の取り扱いを明らかにすることにある。韻文では語順を無理に変えたり、必要ではない語を加えたりして、文章を装飾する傾向がある。逆に散文では、添加された語を削除したり、語順を変えて文を作り直したりすることが必要となる。当時の散文作者がどんな基準で文を作り直したのかを知ることは、15世紀という韻文から散文への移行期を研究するうえで非常に重要だと思われる。
2.臨時総会