第70回例会

日時:2009年12月12日(土) 13:30~17:30
場所:京都ドイツ文化センター
<<内容>>

研究発表会

司会者:金子 哲太 氏(関西大学非常勤講師)

研究発表1
発表者:米田 繭子 氏 (京都大学院生)
題目:類推作用と脚韻の関係―英語の音節構造を通して―

[発表要旨]

 「類推」とは、ある狭い範囲内で多数の個人が自発的に同一の形態を創造し、後にそれが一集団に支持され、そしてその結び付きが強化されるにつれて社会全体に広まるという段階を踏む現象のことをいう。先行研究ではこの「類推」が動詞群の移行を促進したと捉えられているが、この現象について具体的な考察はなされてこなかった。ゆえに、何が原因となって類推作用が動詞群の移行に働いたのか考究していく必要がある。本発表では狭い範囲に生じる類推作用をみるため韻文に限定する。そして音節構造の観点から類推作用が引き起こされる原因を分析し、脚韻との関与を示す。さらにさまざまなテクストの脚韻箇所に注目し、時代的用例に基づいて動詞の移行に類推が機能していたことを明らかにすることが今回の研究発表の主たる目的である。


研究発表2
発表者:伊藤 亮平 氏(広島大学院生)
題目:ドイツ中世抒情詩ミンネザングにおけるラインマル・デア・アルテの位置づけ

[発表要旨]

 本発表では、12世紀後半のミンネゼンガー、ラインマル・デア・アルテを取り上げる。ラインマルは「高きミンネ」の発展に大きく寄与し、『トリスタン』の作者ゴットフリート・フォン・シュトラースブルクからも「ハーゲナウの小夜鳴鳥」と評された歌人であった。
しかし、今日ではヴァルター・フォン・デア・フォーゲルヴァイデとの文学的論争におけるヴァルターの論争相手として言及されることが主である。そこで本発表では、主要なミンネゼンガーの作品を例に挙げながら、ミンネザングの変遷を概観するとともに、文体、ジャンル、内容の点からミンネザングにおけるラインマルの新たな位置づけを試みたい。


研究発表3
発表者:筒井 友弥 氏(京都外国語大学)
題目:心態詞malの意味と用法について

[発表要旨]

 本発表では、主に「命令」や「依頼」の発話で頻繁に使用される心態詞malに注目する。第一に、意味的な考察として、心態詞malの派生元である時間副詞einmal、およびその語彙形成に関係する頻度副詞としてのeinmalに焦点を当て、これまで扱われてこなかった心態詞malの基本的意味を抽出する。第二に、語用論的分析として、心態詞malが行為指示型の発話で用いられ、その「要求」に丁寧な性格を付与するという機能に着目し、アンケート調査の結果に基づいて、少なくとも話法助動詞könnenを伴う決定疑問文では、その機能が発揮されないことを示唆する。本発表の目的は、このような分析を通して、心態詞malの意味と用法を明らかにすることである。


2.臨時総会

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