第66回例会

日時:2008年9月20日(土) 13:30~17:30
場所:京都ドイツ文化センター
<<内容>>

研究発表会

司会者:河崎 靖 氏(京都大学)

研究発表1
発表者:井上 智子 氏 (京都大学院生)
題目:心態詞 dochの歴史的考察 ―中高ドイツ語を主に―

[発表要旨]

 心態詞は、通常ドイツ語で文法カテゴリーと見なされるよりむしろ、話者の心的状況を示す語彙カテゴリーとして扱われている。このような語彙カテゴリーは、対話を循環させるのに重要な役割を果たす。本発表では、現代ドイツ語において心態詞として多様に用いられながらも1970年以降コミュニケーション理論が発展するまで注目されてこなかった、とりわけdochを取り上げ、歴史的に考察する。その際、中高ドイツ語の作品『哀れなハインリヒ』を中心に、dochがどのように使用されていたのか、文脈から観察すると共に写本での表れ方も考慮し、データを用いて実証的に検証したい。


研究発表2
発表者:安永 昌史 氏(フランクフルト=ゲーテ大学院生)
題目:トカラ語とはいかなる言語か?―ゲルマン,スラヴ,インド=イラン語等との言語特徴的な諸側面の対比による、その印欧語的性格の再描写―

[発表要旨]

 中央アジア東部において千年以上前に話されていたトカラ語(A, B方言)は、他に同じ語派を形成する言語が確認されない、孤立した印欧語の一つである。これはすなわち、祖語を経由しなければ、トカラ語は他の印欧諸語との語源的な近縁関係を持たないことを意味する。しかしながら、それは他の言語から見てトカラ語が極端に異質であることを意味するのではない:トカラ語に見られる幾つかの言語構造的な特徴が、語派の壁を越えて他の印欧諸語にも当然見られるのである。本発表では、トカラ語の音韻,形態,統語ならびに語彙的な特徴の幾つかを採り上げ、ゲルマン,スラヴ,インド=イラン語派等におけるそれらと対比することにより、トカラ語の印欧語的性格を今一度、見つめ直すきっかけとしたい。


研究発表3
発表者:尾崎 久男 氏(大阪大学)
題目:英語における借用翻訳の通時的考察:dépendre dedepend ofdepend onか?

[発表要旨]

 英語の歴史上、フランス語の影響は絶大であり、英語は単語レベルのみならず、句や節レベルまで借用してきた (後者の例としてit goes without saying that(<cela va sans dire que) が挙げられよう)。確かにtake part inに注目しても、類似表現がフランス語 (prendre part á) に存在するため借用翻訳のようである。ところが、通時的に古英語dael-niman(ドイツ語teil-nehmenを参照)も考慮すべきであり、英語本来の語法をフランス語の単語によって置換したに過ぎない。結局、ある表現が別の言語の借用翻訳だという結論は容易に導き出せなくなる。本発表では、英語における動詞句レベルの借用翻訳を通時的な観点から再考してみたい。


臨時総会

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