場所:京都ドイツ文化センター
<<内容>>
研究発表会
司会者:金子 哲太 氏(関西大学非常勤講師)
研究発表1
発表者:長縄 寛 氏 (関西大学非常勤講師)
題目:英雄叙事詩『クードルーン』に見られる定関係代名詞構文について
[発表要旨]
定関係代名詞derによって導入される関係文は、おおむね上位文中の名詞成分(=先行詞)をより詳しく説明する副文と理解されるが、中高ドイツ語期にはこのような用法の他にも様々なタイプの関係文が存在していた。例えば先行詞を自らに含み、その機能を兼ねるものや、関係代名詞の格が先行詞の格
(あるいはその逆) に合わせられる牽引(Attraktion)のケース、また関係代名詞によって導入された形式上の関係文が意味上の条件文(wenn einerの意)となることもまれにある。さらに中高ドイツ語期は、副文中の定動詞を後置させることによって主文中の動詞語順との区別をなすという規則が一般化する以前の中間段階にあたり、一般的に副文の定動詞は少なくとも主文の定動詞よりも後方に置かれていたようである。しかし『クードルーン』のような韻文作品では各詩行末の語が押韻に用いられるため、動詞以外の語によってこの位置が占められれば、特に短い関係文では主文の動詞と同様の語順を取らざるを得なかったという可能性もある。本発表では『クードルーン』に見られる定関係代名詞構文に関して、上で挙げたような諸特徴、問題点を、具体的に例を示しながら明らかにしたいと思う。
研究発表2
発表者:塩見 浩司 氏(関西大学非常勤講師)
題目:ゴート語動詞接頭辞の意味に関して
[発表要旨]
ゴート語の動詞接頭辞を取り扱うに際して、これら接頭辞には単純動詞に語彙的な意味を与えるものと、ある一定の動作のあり方を与えるものがあるのはよく論じられるところである。例えば前者ならqiman(nhd. kommen) : gaqiman (nhd. zusammenkommen)、後者ならswiltan (nhd. im Sterben liegen) : gaswiltan (nhd. sterben)のような場合である。今回の発表では後者のものに焦点をあててゴート語動詞接頭辞に関していくつかの問題点を考えてみるが、ga-以外の接頭辞にも焦点をあててみたい。またそのほかに新約聖書の翻訳という観点からも多少の言及をすることになるだろう。
研究発表3
発表者:牧野 節子 氏(関西外国語大学非常勤講師)
題目:音楽と言語―音楽と言語とのたえざる対決としての西洋音楽史―
[発表要旨]
西洋音楽における音楽と言語の関連について考察する際に、T.G.ゲオルギアーデスの著書『音楽と言語 (Musik und Sprache)』を避けて通ることはできないであろう。ゲオルギアーデスは『音楽と言語』の中で、ミサ作品を取り上げながら、二つの異質な音楽観がそれぞれお互いを主張しあうプロセスとして西洋音楽の歴史を解説している。その音楽観とは、「装飾しての音楽」つまり器楽的な考え方と、「言葉の具現としての音楽」という二つの態度なのである。
本発表では実際の音楽例を用いて、上記の二つの音楽観が綜合されていくプロセスに焦点をあてながら、音楽と言語の関わりについて考察する。
臨時総会