第57回例会(研究発表会)

第57回例会(研究発表会)

日時:2005年9月10日(土) 13:30~17:30
場所:京都ドイツ文化センター
<<内容>>

研究発表会

司会者:河崎 靖 氏(京都大学)

研究発表1
発表者:檜枝 陽一郎 氏 (立命館大学)
題目:不定詞と分詞の相克──中世期の低地言語の事例から──

[発表要旨]

現在のドイツ語では、gehen が zuのない不定詞つきで用いられることはあまりない。他方、kommen が同様に使われる場合には、ふつうは動詞の過去分詞とともに用いられ、不定詞をともなう場合は zu不定詞とするのが通例である。しかし中世期の言語を考察すると、以上のような移動を表す動詞は、不定詞や現在分詞また過去分詞とともにより自由に用いられており、上述した現代ドイツ語の例は用法の狭化ないし縮小を表している。中世期から現代語にいたる経緯を追いながら、その背景をさぐるつもりである。

 


研究発表2
発表者:平井 敏雄 氏(学習院大学)
題目:中世語研究と現代語研究の接点を探る──『枠外配置』に見るドイツ語統語構造の歴史的変化──

[発表要旨]

古高ドイツ語・中高ドイツ語には、導入辞を伴う従属文において、動詞末尾配置(V/E)を示さない文が広範に見られる(例:dhazs dher selbo gheist ist got「この霊が神であるということ」(Isidor)。下線部が定動詞)。現代ドイツ語では、文の右の枠の外に構成素があらわれるこの構造は「枠外配置」と呼ばれ、V/Eという原則に対する一種の例外的な現象と見なされている。本報告では、古高ドイツ語・中高ドイツ語におけるこうした語順を、枠外配置の一種であると仮定し、Isidor(古高ドイツ語)・Tauler(中高ドイツ語)をサンプルに、現代ドイツ語とは異なるその出現の条件を明らかにすることを試みる。

 


研究発表3
発表者:嶋﨑 啓 氏(東北大学)
題目:他動詞の反使役化の諸相──再帰動詞と他自動詞を中心に──

[発表要旨]

現代ドイツ語において sich öffnen のような再帰動詞と brechenのような他自動詞は、どちらも他動詞構文の対格目的語が再帰動詞および自動詞構文の主格主語になるという点で共通する。しかし歴史的に見ると、再帰動詞においては主語はもともと「人間」に限定されていたのであり、「人間」のような内在的力を持つものの変化の表現から内在的力のない「物」の変化の表現へと意味拡張が行われて、「物」が変化の対象になることが可能になったのに対し、他自動詞においては、随伴動詞や相互動詞を除けば、変化の対象は典型的には「物」であったという違いがある。本報告は、そのような違いが現代語における再帰動詞と他自動詞の意味的相違にも反映されていることを示す。

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