第50回例会(研究発表会)

日時:2003年6月7日(土) 14:00~17:00

場所: 関西ドイツ文化センター(京都)

<<内容>>

1.研究発表
発表者:羽根田 知子 氏(京都外国語大学)
題目:damit文の時制について

[要旨]

主文と副文から成る文を書く時、副文の時制をどうすればよいのか迷うことがある。例えば、「私は、彼女が風邪を引かないように、私の上着を貸してあげた」という文を書く場合、「彼女が風邪を引かないように」の部分に接続法を用いないとすれば、現在形で表すのか、あるいは過去形で表すのかという問題が生ずる。又、主文と副文の時制が共に過去形であっても、接続詞がdassとdamitでは、主文と副文によって表される事柄の時間関係が異なる。
ドイツ語には、いわゆる「時制の一致」がないと言われているが、ではどうすればよいのかと問われると、即答するのは難しい。本発表では、damit文の時制を観察することから始めて、一定の傾向を導き出し、さらに、時制が一致しているように見える文を、「時制の一致」という言葉を用いないで如何に説明しうるかを考察したい。

 


2.第26回言語学リレー講義
発表者:武市 修 氏(関西大学)
題目:中高ドイツ語叙事詩に見られる表現の多様性

[要旨]

ドイツ語の歴史の中で中高ドイツ語の時代は、独特の様相を呈している。つまり、一方では総合的構造から分析的構造への言語の一般的な変遷の過程をたどるとともに、他方では、脚韻文学なるが故の独特の表現形式が並存しているのである。詩人たちは制約された条件の中で彼らの詩的世界を表現するために、様々な手段を用いた。本発表では、宮廷叙事詩を中心に、前者の一例として、分離動詞への過渡的な現象の一端を垣間見、後者の例として、押韻しリズムを整えるための動詞の縮約形(例えば、過去分詞gesaget, gelegetなどの代わりのgeseit, geleitなどの形)やさまざまな迂言法(例えば動詞の繰り返しを避けるための代動詞としてのtuonの用法など)を例示し, また、その中間的な現象として、文法化されつつある中で元の意味をも残している完了や接続法の多様な用法など、語形、語順、統語法の面から当時の宮廷叙事詩にみられる独特の表現について紹介してみたい。


3.定例総会

※この会で会誌第2号が発行された。

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