第45回例会(研究発表会)

日時:2001年9月22日(土)13:30~17:30

場所: 関西ドイツ文化センター(京都)

<<内容>>

1.研究発表
発表者:井原 聖 氏(京都大学院生)
題目:分離動詞の体系的な記述に向けての考察――auf-動詞、an-動詞を中心に ――

[要旨]


本発表では、その対象をPartikel: auf-, an-に限定し、これらのPartikelが通時的な意味変遷の過程で示す基本的な傾向をもとに、共時的にも同様の傾向を指摘でき、それを体系的に記述することが可能であるのかを探りたい。そこで、通時的な観点からは、Partikel のうちで、現在もはやその原義が感じられず、そしてまたそのようなPartikelと結合し分離動詞をなしているもののうち、基礎動詞の原義がもはや感じ取れなくなった、つまり意味的に高度に発達した動詞と考えられるaufhören, anfangenを中心に考察する。これらのいわゆる分離動詞の意味変遷を体系的に確認することにより、現在「分離動詞」というカテゴリーに一括されている動詞は、意味用法的には一見様々なタイプのものが混在しているかのように見えるが、それらの意味用法の背後では、統一的なメカニズムが働いているのではないかということを論じたい。


2.研究発表
発表者:黒沢宏和氏(琉球大学)
題目:古高ドイツ語『タツィアーン』における法の用法について――特にラテン語との法の相違を中心に――

[要旨]


『タツィアーン』は、いわゆる総合福音書(Evangelienharmonie)であり、830年頃フルダでラテン語から古高ドイツ語へと翻訳された。従って、ラテン語のオリジナルに極めて忠実に訳されている。しかしながら、法(Modus)に関しては、オリジナルと異なった箇所が散見される。そこで本発表では、この法の相違の問題をモダリテート(Modalität)の側から考察したい。なぜなら、翻訳者の心的態度が法を選択する際に重要な役割を演じていると考えられるからである。


3.研究発表
発表者:黒田 廉 氏(富山大学)
題目:動詞接頭辞 ab-と文意味

[要旨]


ドイツ語において、各動詞接頭辞は形態的には一つでありながらも、基底語との結合によって多様な意味の動詞語彙をつくっている。このような複合動詞による文の意味は動詞意味によってのみ担われるのではなく、目的語などの文構成素のもつ語彙的意味、実世界についての語用論的知識によっても補われている。
本発表では、接頭辞ab-による複合動詞文について、まず文意味構造と基底語、接頭辞との意味的結合関係を分析し、次に、このような意味的枠組みの中に、実世界についての語用論的知識に整合するような語彙的意味をもつ各文構成素が組み合わされ、文意味が形成されていることを示す。

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