第40回例会(研究発表会)

日時:1999年12月18日(土)13:30~17:30

場所: 関西ドイツ文化センター(京都)

<<内容>>

1.研究発表
発表者:片岡 宜行 氏(京都大学大学院生)
題目:『任意の与格』の用法――空間規定詞を伴う所有の与格を中心に――

[要旨]

ドイツ語の「任意の与格」は、文法書において「所有の与格」「利益/不利益の与格」「関心の与格」などに分類した形で記述されている。そして、「所有の与格は身体部位の所有者を表す」「利益/不利益の与格は利害をこうむる人物を表す」といった解説がなされる。しかし、これだけでは与格の用法が十分に明らかにされているとはいえない。本発表では、以下の構文に見られる所有の与格に着目する。
Er klopft ihm auf die Schulter.
Er legt ihm die Hand auf die Schulter.
これらの構文では、Schulter と ihmの間に見られるような身体部位名詞とその所有者の間の「所有の関係」は、例外なく空間規定詞の中の名詞と与格の間に生じる。したがって、このような構文に現れた与格は、身体部位名詞のみでなく空間規定詞全体と強く結びついていると考えられる。このような所有の与格の用法の分析を手がかりに、任意の与格について考察する。


2.報告
報告者:永井 達夫 氏(関西大学非常勤講師)
題目:ドイツ語の授業とインターネット

[要旨]

 2年次以降のテキストやランデスクンデの教材として、学習者のモティヴェーションを高める手段として、さらに学生の自習のためにも、インターネットの利用が有効なのは言うまでもありません。一方でそのための方法論がないため、私たちは各自が試行錯誤を繰り返しながら授業を行っているのが現状です。また各大学での設備の違いなど、ハード面での課題も決して小さくはありません。いずれにせよインターネットが一時的なブームで終わることがない以上、ドイツ語の授業とインターネットの関わり合いは、今後ますます深まっていくはずです。
発表者はこの3年ほどのあいだ、ドイツ語の授業でインターネット(主にホームページ)がどのように利用できるか考えてきました。また実際の授業でも、さまざまな形でインターネットを活用してみました。さらにはドイツ語学習者のために、自らホームページまで開設しました。その過程で明らかになった問題点や、今後の可能性などを、出席者の皆さんといっしょに考えたいと思います。


3.第22回言語学リレー講義
講師:西本 美彦 氏(京都大学)
題目:文法の固定概念を疑ってみる

[要旨]

 現代の諸々の文法カテゴリーを考えてみる場合、多くの修正を受けながらも、その根底には形態論に依拠した伝統文法が生きながらえていることを無視できない。しかしながら、これらの固定化された文法概念が自然言語の現象を説明するのに不十分なのであれば、従来の文法概念に潜在的に内在している矛盾を想定することができる。もしそのような発想をしてみる場合、そして文法の固定概念からの離脱を試みようとする場合、いったい従来の文法概念はどのように組みかえられるべきか、あるいはどのような新しい概念分類が可能になるかについて、考えてみたい。

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