場所:関西ドイツ文化センター(京都)
<<内容>>
シンポジウム「翻訳・通訳はどこまで可能か」
1.発表
発表者:藤涛 文子 氏(神戸大学)
題目:「マルチメディア翻訳」の特性と翻訳例
[要旨]
翻訳行為によって起点テクストと等価な目標テクストを作り出すことは常に要請される一方で、現実にはそうした等価翻訳を困難にする要因がある。等価は内容等価・形式等価・動的等価(効果の一致)など様々なレベルに分けて考えられ、重要度により何を優先するか、何を犠牲にするかが決定される。映像・音響を含むいわゆる「マルチメディア翻訳」(K. Reiss*2)の場合、起点テクストに含まれる情報は、どのように取捨選択されるのであろうか。
報告では、「マルチメディア翻訳」の特性をまとめ、映画と歌の翻訳例を用いながら、目標テクストのコミュニケーション媒体が等価翻訳に加える制約について問題提起をしたい。
発表者:松原 敬之 氏(フリーランスのドイツ語翻訳通訳者)
題目:同時通訳って、どんなもの?
[要旨]
この発表の組立ては、以下の通り。
1.まず、私が自ら手がけた同時通訳の業務を数例紹介する。現在20名前後いると思われるドイツ語同時通訳者は、それぞれ仕事への関わり方が異なるので、私の場合はどうかということを知ってもらう為の紹介である。
2.先に紹介した業務をもとに、どのようなスキル、どのような準備が具体的に求められているかを、個々に説明していく。
3.先に説明したスキルを修得するために、どのような練習、どのような注意が必要かを述べる。
4.関西のドイツ語通訳者達の勉強会における活動を紹介する。
東京では、自ら同時通訳業務をこなし、且つ同時通訳者の養成に尽力しているゲルマニストがおられ、ドイツ語通訳界のインフラは関西よりも充実している。関西でもそのようなインフラの整備を期待したい。
3.発表
発表者:飯田 仁 氏(ATR音声翻訳通信研究所)
題目:協調複合翻訳方式と多言語チャット・システム:Chat Translation System/p>
[要旨]
話し言葉の自動翻訳を目指すとき、その翻訳過程を説明するモデルが望まれます。しかし、構成的な説明原理に基づいた規則を網羅し、多様な言語表現を記述してモデルを作ることは難しいようです。自然な発話には、文法規則だけでは容易に捉え難い現象が多々現れていて、文法的に不完全であったり、語の組合せから句や文の意味を論理的に形成できないこともあります。また、疑問、命令、様相など、広義の意味での「ムード」に関する表現の取り扱いも不可避であります。 このような状況のもと、「協調融合翻訳方式」と呼ぶ新しい翻訳方式を提案しました。この方式の位置づけや意味合いについて、機械または計算機を使った自動翻訳研究の歴史を振り返りつつ、説明いたします。この方式に基づいて、日本語と英韓独語の間の話し言葉翻訳実験システム”Chat Translation”を作っています。現在、このシステムは音声翻訳の各種実験に使われています。ビデオを使って音声翻訳の一端もご紹介いたします。