場所: 関西ドイツ文化センター(京都)
<<内容>>
1.研究発表
発表者:高田 博行 氏(大阪外国語大学)
題目:言語の「本来形」という思想と言語の現実
――17世紀後半における格変化を例にして――
[要旨]
屈折素(Flexiv)は音節をなし明確に屈折変化を表示するべきである(つまり dem Baum ではなく dem Baume、des Tags ではなく des Tages、unsern Kindern ではなく unseren
Kindern)という17世紀後半の文法家たちの思想は、同じ時期に言語の現実において格変化語尾の e音が組織的に復旧されたプロセスと符合し、その点では言語の理論と言語の現実とが一致対応した。しかし他方では、強い変化ほど古典語に近くそれゆえ正しいという思想のために、文法家たちは der guter Mann, die gute Leute, gutes Weins, derer Maenner, die Buergereといった多重格変化(Polyflexion)のほうをどうしても優先させがちで、この点では単一屈折(Monoflexion)への傾向を明確にしていた当時の支配的な言語事実に反した。
2.シンポジウム「日本のドイツ語教育は滅びるか?」
報告者:西本 美彦 氏(京都大学)
題目:京都大学でのドイツ語教育の現状とその改善の取り組みについて
報告者:中村 直子 氏(大阪府立大学)
題目:工学部単位減に対する大阪府立大学の対応と現時点での成果
報告者:橋本 兼一 氏(同志社大学)
題目:同志社大学におけるドイツ語教育――現状・成果・課題――
[報告要旨]
京都ドイツ語学研究会の1986年の第一回例会でドイツ語教育の危機についてのシンポジウム(自由討論「いま大学でドイツ語は必要か?」)が行われて、すでに十年余になる。その後1995年7月に「大綱化」を主眼とした大学設置基準の大幅な改訂が行われ、各大学では教養教育のカリキュラム編成やその実施体制に関わる改革が急速に進められた。その影響をもろに被った科目の一つはいわゆる「第二外国語」である。なかでも従来からほとんどの大学で履修されてきたドイツ語の衰退ぶりはまさに劇的であると言ってもよい。
本シンポジウムでは高等教育における第二外国語の一環としてのドイツ語に焦点を合わせながら、国立大学、公立大学、私立大学での外国語教育の現状とその改善のための取り組みについて報告を行う。それをもとに、国際化の進む現代社会において外国語教育はどのように位置づけられなければならないか、そして外国語教育の理念を、実践的かつ効果的に遂行するためには、なにが求められるかについての具体的提案を含んだディスカッションを行いたい。