第111回例会(対面開催)

日時:2023年12月16日(土)13:30 ~ 17:30

場所:京都外国語大学4号館5階452教室

<<内容>>

研究発表1
発表者:井上 瞬 氏(京都府立大学非常勤)
題目:イギリス・ルネサンス演劇における等位名詞句の人称代名詞の格について

[発表要旨]

  現代英語における等位名詞句の人称代名詞の格の非標準的用法についてはしばしば研究の対象となっている。また、同様の用例が少なくとも16世紀の文献において既に見出されることも指摘されてきた。しかしながら、初期近代英語期(1500–1700)における等位名詞句の人称代名詞の格については、これまで研究が十分に行われて来たとは言い難い。そのため、当時の資料としてWilliam Shakespeareらによって書かれた演劇を対象に網羅的な調査を行い、その結果見られた傾向に関して考察を行うとともに、現代英語との相違点についても触れたい。


研究発表2
発表者:信國 萌 氏(大阪公立大学)
題目:評価を表すドイツ語形容詞 gut, schön とその評価対象について
-事象や命題とのかかわりを中心に-

[発表要旨]

 gut, schönはともに対象への肯定的な評価を表す形容詞である。両者は同じ統語的環境に現れていても、その意味的な評価対象が異なることがある。例えばein guter/schöner Tänzerでは、前者は「ダンス」に対する評価を、後者は「ダンサー」に対する評価を表すと解釈されやすい(ダンスの上手な/容姿の美しいダンサー)。本発表ではgut, schönが評価を表す対象に関して、Vendler (1968) を踏まえて「個体」「事象」「命題」に分けて整理する。特に事象や命題に着目し、コーパスのデータをもとに、gut, schönと評価対象との意味的なかかわり方の相違について考察する。また、この意味的な違いが両形容詞の統語的な分布の違いと相関している可能性を示す。

 

 


研究発表3
発表者:細川 裕史 氏(阪南大学)
題目:最初期および現代における大衆紙の言語
-そのマクロおよびミクロ構造に関する社会語用論的考察-

[発表要旨]

  19世紀にドイツ語圏の幅広い社会層にまで広まった新聞の地位は、20世紀末に普及したインターネット、とりわけSNSの普及によって脅かされている。そのような時代において、自らもオンライン化した新聞では、SNSの文章に慣れ親しんだ読書層にむけてどのような言語が用いられているのだろうか? 本発表の目的は、代表的な大衆紙である『ビルト』のオンライン版を対象として、その一端を明らかにすることである。その際、20世紀における『ビルト』だけでなく最初期の大衆紙『ライプツィヒ絵入り新聞』とも比較し、それぞれの読者層の嗜好や社会的背景の違いと関連付けつつ、マクロ構造(紙面構成)とミクロ構造(統語構造)の両面から考察する。


質疑応答
司会者:中西 志門 氏(発表1)
吉村 淳一 氏(発表2・3)

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