第109回例会(対面開催)

日時:2023年5月20日(土)13:30 ~ 17:30
場所:京都外国語大学4号館5階452教室
<<内容>>

研究発表会

研究発表1
発表者:高橋 美穂 氏(三重大学)
題目:非対格性・使役性・アスペクト-移動動詞を例に-

[発表要旨]

 非対格性を区別する文法現象は「非対格性テスト」と呼ばれているが、一連のテストでミスマッチを起こす例として挙げられるのが移動動詞である。本発表では、Kaufmann (1995)
における非対格性テストに関する議論を概観し、移動動詞にあてはめて検証する。また、非対格動詞のふるまいを見せる条件とされることがある「外的原因」(cf. Levin/Rappaport Hovav 1992)が、移動動詞においてどのように再現されうるのか、自由与格で可能となる「非意図的使役主」(cf. Schäfer 2008)解釈を例に考察する。これらを通し、非対格性ならびに使役性とアスペクトの連関を示す。


研究発表2
発表者:納谷 昌宏 氏(元愛知教育大学)
題目:„hinab“ と „herab“ の非対称性について

[発表要旨]

  方向副詞である hin は「話者から遠ざかる」、her は「話者に近づく」という意味を有している。そしてこれらの副詞が „ab“ と結合した „hinab“ は「話者から遠ざかって下りていく」、„herab“ は「話者に近づいて下りてくる」という意味を有する。ところがたとえば、 Er musste Tablette herabschlucken.(彼は錠剤を吞み込まねばならなかった)のように、「話者に近づく」意味を有さない場合にも „herab“ が用いられることがある。こうした用法は „hinab“ にはない。そこで本発表では、コーパス分析とインフォルマントテストにより、副詞 „hinab“ と „herab“ の基本的意義と派生義を明らかにし、その非対称性を明らかにしたいと思う。そして何故こうした現象が起こるのかを仮説という形で提示したいと考えている。人間の持つ認知機能との関係が提示できれば幸いである。


質疑応答
司会者:中村 直子 氏


定例総会

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