第104回例会(WEB開催)

日時:2021年9月18日(土)13:30 ~ 17:00
(Zoom会議)

<<内容>>

研究発表会

研究発表1
発表者:芹澤 円 氏(神戸大学)
題目:1800年前後のドイツにおけるモード雑誌の言語的特徴
―「テクスト化の戦略」と語彙の観点から

[発表要旨]

 ドイツでは文化の商業化のなか18世紀末に、モード雑誌が登場する。Journal des Luxus und der Mode(1786~1827年、以下Journal)を同時代の新聞と比較すると、従属文の頻度に有意差は認められないが、新聞ではeinige Erläuterungen über die […] geschlossene Conventionのように動作名詞による名詞句が顕著であるのに対して、Journalではum den Kopf, unter dem Federbusche in eine große Schleife gebundenのようにモード品の由来、形状、品質等を言い表す前置詞句が多いことがわかる。Eroms(2008)の「テクスト化の戦略」に準拠すると、この違いは、新聞が出来事を時間軸で動画的に描き出すErzählenが優勢なテクストであるのに対して、Journalは対象物を空間軸で静止画的に描き出すBeschreibenが優勢なテクストであることを示唆している。さらにまたJournalは使用語彙をうまく制御し、「推奨する」といった指令型の動詞や、比較級・最上級表現、高価値語などを使用して、書き手にしか直接体験できない質感を魅力的に伝え、モード品を宣伝し読者に購買させるべく発信している。


研究発表2
発表者:木戸 紗織 氏(東北医科薬科大学)
題目:新たなルクセンブルク語話者?―難民の言語学習と三言語併用の今後―

[発表要旨]

 ルクセンブルクでは年々外国人居住者の数が増加し、それに伴ってルクセンブルク語の位置づけも変化してきた。もともとルクセンブルク人同士の日常的な会話で用いられていたこの言語は、国内のフランス語偏重を是正し三言語併用というルクセンブルクのアイデンティティを維持するために、しだいに「国語」「母語」として象徴的な役割を負うようになった。さらに今日では難民がルクセンブルク社会に定着するための言語、すなわち統合の言語(Integrationssprache)という役割も帯びつつある。本発表ではこのIntegrationsspracheをキーワードに、近年のルクセンブルク語およびルクセンブルク社会の変化を追ってみたい。


研究発表3
発表者:島 憲男 氏(京都産業大学)
題目:宮沢賢治のドイツ語訳テキストに生起するドイツ語構文の機能的役割:結果構文と同族目的語構文を中心に

[発表要旨]

 本発表では、事態を引き起こす基底動詞と結果状態を表す結果句の相互作用によって最終結果状態の名詞句が確定するドイツ語の結果構文と、自動詞を基底としつつも文中に同語源である対格名詞の生起を許す同族目的語構文を主に取り上げ、当該構文がドイツ語のテキストの中でどの程度実際に使用され、どのような構文的な役割を果たしているかを、ドイツ語に翻訳された宮沢賢治の複数の作品を用いて調査した結果を報告する。これまで発表者は、主にドイツ語を原典とするテキストや、英語の原典からドイツ語訳されたテキストを使って当該構文の構文的機能を分析することを試みてきたが、日本語から翻訳されたドイツ語テキストの検討を通じて個別の研究成果が検証されるだけでなく、新たな発展の可能性を提供してくれたことを示したい。さらに、可能であれば、発表者が現在取り組んでいる「構文間の文法的ネットワーク」の中で両構文をそれぞれどのように位置付けているのか、その最新の考えも合わせて提示したいと考えている。


要旨説明/質疑応答(Zoom会議)

司会者:岸川 良蔵 氏

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