要旨説明・質疑応答:2020年12月12日(土)10:30 ~ 12:30
<<内容>>
研究発表会
研究発表1
発表者:鈴木 一存 氏(京都大学大学院生)
題目:有限の空間における中心と周縁のメトニミーの視覚的検討
[発表要旨]
「(任意の有限の)空間」の意味から、「(その有限の)空間の内部にいる人間」の意味へと変化する、一連の語群によって構成される範型が存在する。この有限の空間における中心と周縁が交替する意味変化の範型は、メトニミーの古典的類型の一つである「容器」と「内容(物)」のメトニミーと、その性質を少なからず共有している。本発表では、このような空間の中心と周縁が交替するメトニミーのドイツ語における実例を参照した上で、イメージスキーマや図地反転などをはじめとする、視覚的認識過程に関連する複数の理論的枠組みを、多角的に照射することを通して、説明モデルを構築し、独自の見解を提示することを目標とする。
研究発表2
発表者:坂東 諒太 氏(関西学院大学院生)
題目:使役交替で見受けられる再帰的な構文と自動詞的な構文の特性
[発表要旨]
ドイツ語の使役構文から主語である動作主の項を削除し、目的語が主語として実現するとき、1)再帰構文を取る場合(例 Er öffnet die Tür.→Die Tür öffnet sich.)と2)自動詞として実現する場合(例 Er bricht den Zweig.→Der Zweig bricht.)がある。本発表で取り挙げるのは、3)動詞が再帰的にも自動詞的にも実現する場合である(例 Er schließt die Tür.→Die Tür schließt (sich).)。この第3の傾向をSchäfer(2008)はclass A(1)、class B(2)に次ぐclass Cと位置付けた。本論では、そのclass Cとして挙げられた17の動詞に、新たに動詞を加える形を採る。その用例を電子コーパスCOSMAS IIで収集し、語用論的な傾向および再帰代名詞の生起の義務性を考察する。その際、Kratzer(1995)の「場面レベル述語」「個体レベル述語」を導入して再帰代名詞の生起の特性について明らかにする。
研究発表3
発表者:大薗 正彦 氏(静岡大学)
題目:ドイツ語の基本語彙と基本語彙でカバーできないもの
[発表要旨]
語学教育において基本語彙の策定は言うまでもなく重要である。発表者もかつて5000語レベルのドイツ語基本単語リストを作成したことがある(大薗 2015)。しかしながら基本語彙も万能ではない。本発表では、実際のテクストの理解には5000語程度の基本語では不十分であることを確認しつつ、ではテクストの理解のためには何が必要なのか考えてみたい。着目するのは、時事的な語や新語、広義の慣用句、派生語・複合語などの語形成、そして専門語である。結論として、ありきたりではあるが、語彙学習においては、語の数を増やすことだけにとらわれず、語彙のしなやかな側面を認識し、語形と語義の結びつきに対して柔軟な考え方を身につけることも重要であることを述べる。
要旨説明/質疑応答(Zoom会議)
司会者:薦田 奈美 氏