<<内容>>
1.研究発表
発表者:吉村 淳一 氏(大阪市立大学院生)
題目:2格の機能の二層構造――「基本的機能」から「具体的な意味」へ――
[要旨]
2格が多面性をもち、用いられる環境によって一見しただけでは別の機能に見えるのは、2格のもつ基本的機能が、それほど固定化されたものではなく、可変的な要素を含んでいることに起因するのではないか。本発表の目的は、2格動詞(genitivfähiges Verb)を考察の対象にし内容的解釈にもとづく2格の分類をさらに越えて、2格を多種多様に見せるメカニズムを解明することにある。 研究史上、2格の基本機能に関する議論は、未だ解決を見ていないが、独立した個々の機能が混合した格として捉え、「本来的Genitiv」と「非本来的Genitiv」に分け、その本質を捉えようとする立場もあれば、すべての用法は、一つの機能から派生したと考える立場もある。これらの立場を紹介したうえで、2格が名詞を形容詞化する統語機能や2格がもつ意味機能の二層構造を取り上げ、2格の本質に迫ってみたい。
発表者:神谷 善弘 氏(大阪学院大学)
題目:入門期の発音指導について
[要旨]
ドイツ語入門期においては、発音の指導が重要であることは疑いの余地はないであろう。しかし、日本の大学のドイツ語の授業では、文法や語彙については、授業でも比較的丁寧に説明され、また参考書や単語集も数多く出版されているのに対して、発音については、授業が進むにつれ、練習の機会が少なくなり、自習の方法も明確でないのが実情である。実際に、1年生の後期や2年生の授業で、教科書のテキストをある程度でも正確に音読できる学生が少ないという経験は誰にでもあるだろう。 本発表では、大学の初級クラスの1年間の授業の流れの中で、すべての学生に、アルファベットの読み方や発音規則を身に付けさせる方法について提案を行う。具体的には、授業の実践報告を踏まえて、アルファベットの効果的な指導方法、発音規則の段階的な教え方、数詞の暗誦と関連づけた発音指導、教科書の音読練習の重要性、発音に関する試験の実施方法とその意義などについて詳述を行う。
3.研究発表
発表者:佐藤 和弘 氏(龍谷大学)
題目:欧州連合と多言語政策:ドイツの場合
[要旨]
EU(欧州連合)では様々な分野でヨーロッパの統合を目指した試みがなされている。まずここではEUが提唱する多言語主義・多文化主義に基づいた言語政策に注目し、EU加盟国であるドイツで現在行われている言語政策・外国語教育に目を向け、その現状と問題点を考察する。次に今日の日本の言語政策・外国語教育、とりわけドイツ語教育の抱える問題点を考察していく。