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例会プログラム
研究発表
1. 日本語L1・英語L2・ドイツ語L3の大学生はEuroComGermをどのように評価するのか
上田直輝氏(大阪大学大学院)
2. 動詞の解釈と相関詞 -erlaubenの実例調査から-
井坂ゆかり氏(大阪大学)
3. 生成文法によるドイツ語研究の諸相
伊藤克将氏(大阪公立大学)
〔発表要旨〕
1. 日本語L1・英語L2・ドイツ語L3の大学生はEuroComGermをどのように評価するのか
上田直輝氏(大阪大学大学院)
外国語学習法EuroComGermの目標は,既習の英語およびドイツ語の知識を活用することで,その他のゲルマン諸語の読解能力を効率的に獲得することである。発表者は同学習法について,英語とドイツ語を外国語として学習した日本語母語話者の大学生3名を被験者,オランダ語を目標言語として探索的な実証調査を実施した。本発表では,調査の一環で行われたインタビューの中で被験者がEuroComGermをどのように評価したのか(具体的には,同学習法の長所と短所,同学習法に基づく学習の経験が被験者の既習言語能力や言語意識に与えうる影響などについての発言)について報告するとともに,彼らの発言内容が先行研究の中でどのように位置づけられるのか論じる。
2. 動詞の解釈と相関詞 -erlaubenの実例調査から-
井坂ゆかり氏(大阪大学)
目的語としての相関詞esの出現頻度は,母文の動詞によって異なる。E-VALBUによると,動詞erlaubenには①「誰かに何かの許可を与える」②「誰かに何かを可能にする」の解釈があり,両者でesが任意に出現するという。一方,Smirnova (2017)の調査では,①ではesを伴う事例が見つからず,②では約6割の事例がesを伴っていたことから,esが曖昧性を排除している可能性が指摘されている。しかし,②で常にesが観察されるわけではなく,相関詞の出現に関して疑問は残されている。本発表では,主語・与格目的語・対格目的語を中心にerlaubenの実例を質的に調査し,相関詞の出現について分析する。
3. 生成文法によるドイツ語研究の諸相
伊藤克将氏(大阪公立大学)
生成文法は最も影響力のある文法理論のひとつであり,ドイツ語研究においても多くの成果を生みだしてきた。しかしながら,その複雑さや理論内部における変遷も相まって,その成果がドイツ語研究において広く共有されているとは言い難い。そこで本発表では,生成文法の基本的な考え方および理論の全体像を紹介しつつ,ドイツ語研究において生成文法がどういった成果を上げてきたのか,他の文法理論との比較も交えながらその一端を示す。また具体例として,V2語順,前域を占める要素にかかる制限,前域のes,分離動詞,補文などを取り上げ,これらの言語現象に対して生成文法が与える説明や,逆に生成文法に対してもたらされる課題を述べる。
質疑応答
司会者:大喜 祐太 氏